ニホンゴ、チョトデキル

ゲーム中心フリースタイル妄言

「for elise ~エリーゼのために~」感想のようなもの

※このゲームには正義・正論・愛・恋・友情……は入っていません。
狂気・妄想・鬱・変・劣情……そんなソフトです。

ずっとずっとプレイしたいと思いながらも、中古品が2万~、そもそも見かけることがほぼない、たとえ入手できたとしてもOSの関係で正常にプレイできるかわからない、制作に携わった方のコメントを見るに再版なんかは絶望的……な状況で、おそらく一生プレイできないまま噂だけを耳にするんだろうなあと、自分の中で半ば伝説的な位置にいた「for elise ~エリーゼのために~」のDL販売が開始されたそうなので、知るやいなやさっそくゲットしてきました。
れ、令和も2年になった年にエリーゼが……正規手段でプレイできる……??


ここ数年、自分の中で伝説と化していた「一生プレイできないんだろうなゲーム」がバンバンDLでの再版やらリメイクやらしていて動揺がすごいです。世界、私に忖度していないか?
ガラージュとか、BAROQUEオリジナル版に終ノ空とか、moonとか、もう少し遡るとさよ教DL版とか。どれもプレイできないと思っていた学生時代の自分に現状を知らせても信じてもらえなさそうな現実。この流れに乗ってlainやジサツ、夕闇通り探検隊なんかも気軽に手が出せるようになってほしい。


しかも価格もお求めやすくなっており良心的ですね。
まっっっっっっっったく他人にオススメとかはできない感じの内容ではあるのですが、自発的にこういう方面のゲームが気になる方はぜひ。
www.dlsite.com
18歳未満の方はアクセスしないでね


システム的にはギャラリーなし、サウンドテストなし、の男気溢れるストロングスタイルですが、96年発売のゲームと考えれば今プレイできること自体がありがたい……という感じです。
片道2時間もかからない短さなのと、DL版になるに際して好きなシーンでセーブができるようになっているので、ギャラリー機能についてはあんまり問題ないかも。サウンドテストは正直ついてほしかったですが! どのBGMも雰囲気たっぷりで、単品でずっと流していられる機能があれば嬉しかったです。サントラとか……。
オーソドックスなADV形式で移動先を選んで進めるタイプですが、全体がそんなに長くないのでストレスもそこまでなかったです。同じ場所をウロウロするはめになっても却って主人公が意味もなく町中をうろついている姿と重なってよかった。ゲームは自分で操作して体験してこそだと思っているので、そういう部分のスマートじゃない感じはある程度あっていいなと感じます。


ゲームの造り的な点で言えば20年以上前のものですし、内容でいっても片道2時間程度×2√、ボリューム的な面でいえばそんなに厚くはないです。が、なにか濃い目の原液を飲まされたような読後感があるので、あんまり長くなくてむしろよかったのかも。


とにもかくにも、まさか2020年にこのゲームがプレイできると思っていなかったので感無量です。本当にありがとうございます。


以下、ネタバレありの感想。

全体感

暗い。とにかくめちゃくちゃ暗い。
さよ教にあったわずかな明かりさえも見せない圧倒的な暗さ。
主人公は確かにお世辞にも勤労意欲があるとは言えないし、決して有能ではなく、しかもどちらかといえばロクでもない方に分類される人間だとは思うのだけど、そんな彼の意欲をさらに削ぐように周囲の人間も一様に余裕がなく切羽詰まってる印象。18禁となっているからには対象の大半は社会に出ている人間のはずなのに、社会に出ている人間のメンタルをガリガリ削るような展開が多くてプレイ前半でげっそりすること請け合い!
登場人物の女性すべてにあしらわれ翻弄され玩弄される分には、相手が自分に気があるとかいう幻想じみた期待さえしなければ凹むことはないんですが、この「仕事ができない冴えない男が延々そのことでいびられ怒られる」部分が個人的には一番このゲームが鬱ゲーと呼ばれる所以かな……と。エッチなゲームに癒しを求めてこれを出されたらそりゃ暴れますわ。主人公が一方的になじられているなら「かわいそう!」とも思えるんですが、100%言いがかりをつけられているかと問われれば主人公も不真面目だしな……となる部分があり素直に怒れないのもまたやきもきする一因。
発売年を思うに、世紀末的な終末感が世間にも染み渡ってたんですかね。随所に現実的な退廃感が漂っている。


エッチシーン(??)の半分くらいもシチュエーションが特殊すぎて、抜き目的というよりは不条理・理不尽をあらわすための手法としての凌辱といった感じ。エロが主眼ではないというかエロゲーなのに……)
主人公が妄想に求めていることが「あの子とエッチなことがしたいな」ではなく「あの女!ふざけやがって!こうしてやる!!」なので当たり前といえば当たり前なんですが。辱めてスケベなことをしてやるってより、相手を痛めつける手段として裸にするといった方向性なのであんまり性的な印象を受けないのかな……?
個人的にはそういうの嫌いじゃないんですが、前評判もなにもなくエッチなゲームを遊ぶぞ!って気分だった当時のプレイヤーの方々、怒らなかったかな……とは思います。


総じて、一般的に「エロゲー」と呼ばれるものへの期待を抱いてプレイするゲームではないといった印象でした。
(全年齢にするには不適切な表現のあるという意味で)18禁のゲーム」と伝えればよいのかも。澁澤龍彦とか谷崎潤一郎みたいな……(結構ちがうけど)


曲もさよ教と同じく(というかこっちが原型か)肌色のCGが出ているのに妙に重々しく不穏な曲がかかります。むしろ明るい曲がないなってくらい全体通して暗い曲ばっかり。でもどれもいい曲だからずっと聞いていられる。


恋した女性と結ばれるも、ふたりの関係は今夜限り。ならばいっそ。
といったラストの流れだけであれば、味付けの仕方によっていくらでも純愛チックにしたり、耽美な方向にもっていける題材だと思うんですが(生首とか材料はそろっていたし)そうは一切せずにこれはそんな小綺麗な話じゃなくて、おかしくなった男が起こしたただの連続殺人ですよとでも言わんばかりの投げっぷり、かなり好きです。
サロメみたいなオチにだってできたはずなんですよ、千歳さんの首を前に幸せそうに笑う主人公の描写で幕、とか。でもそんなの全然ない。そういうロマンチックさが一切排されている。なんか意味深に首の画像とモノローグが出てエンディング。
私はこういう話が好きで、そういう話が出てくるというからエリーゼに手を出したクチなのでニッコリなんですが、マジでこれ当時買った人……の気持ちにはなります。あのパッケージだし事故率はむしろ低かったことを祈ります。


さよ教の狂気が逃避した後のどこかファンタジックな妄想の世界で展開するのに対して、エリーゼはどこまでいっても現実がすべてで、現実以外の世界がない。夜ごとの妄想は確かに妄想の世界の話なんですが、主人公はそれを思い描くだけで、足を踏み入れてそっち側に行っちゃったりはしない。朝になれば昨夜の凶暴さは鳴りを潜め、また周囲からいいようにあしらわれ、蔑まれ、冷たい視線を浴びせられ、それでも反論のひとつもしないで、すべてが過ぎ去るのを待つだけ。
まあ最後には一線を越えちゃうんですけどね。

「それはそうだろうよ。幸せになることは簡単なことんだ」
 京極堂が遠くを見た。
「人を辞めてしまえばいいのさ」

魍魎の匣京極堂が言っていますが、主人公はそれができない/許されないがためにいくとこまでいって壊れてしまったという感じ。
もしかしたら最後の最後、自分を玩弄した女を懲らしめ、恋した相手の生首を手に入れたとき遂に境界を越えたのかもしれないですが。
でもそうでなく、エンディングの後も境目を越えられないまま正気が保たれているのだとしたら。というより、毎夜の妄想と同じで夜が明けたとき熱が冷めるように正気を取り戻すのだとしたら。彼にはエンディングのその後も「現実」が続くわけで、主人公が徹底的に現実から目をそらしていることがある意味で主人公ただ一人の視点で見れば救いたり得ていたさよ教とは真逆、本当に一切の救いがない終わりでゾクゾクします。人見先生と違って彼は現実において殺人や暴行を犯しているわけですし、確実に捕まって裁かれるでしょう。


このゲーム、主題は「狂気」とされていますが、実際プレイした後だととにかく「現実」であること、現実のつらさ、みたいなものの方が表に出ていたように感じました。

キャラクターについて

主人公

無能な男がいた。
趣味も生き甲斐もなく、無口で暗い、ただ生きてるだけの男がいた。

あんまりにもあんまりな書かれ方ですが、まあ、実際こんな感じ。
望まぬ営業職にあてがわれ、成績はいつも最底辺。本人の意欲もなく毎日のように外回りに出ると称して公園でサボったり、果ては業務時間にビデオをレンタルして家に帰る始末。遅刻して出勤したのちそのことを咎められても「それくらいのことで……」とか思ってるあたりだいぶアレ。
優柔不断を絵にかいたような人間で、嫌なことを嫌と言えないのはまだしも、嫌なことから距離を取ることさえ半ば放棄しているように見えるし、そのせいで片想いの相手に誤解されまくってしまう。


ある日、子供の投げたボールが頭に当たったのを境にひどい頭痛に襲われるようになり、そこから徐々に凶暴で猟奇的な面を見せるようになる。元から素質があったのか、どこか出血でもして人格に影響が及んだのかは不明。タガが外れやすくなったという意味では前者っぽい。


本来はそんなに悪い人間ではない模様。
姿を消した子供を探す手伝いをしたり、痴話喧嘩に割って入ろうとしたり、千歳さんに惚れられていたりもするし。とにかく環境が悪すぎて卑屈さに磨きがかかっていたところへ刺激があって大爆発してしまった感。


でも妄想の内容は大概が「俺を馬鹿にしたあいつを見返してやる」とか「いいとこだったのに邪魔しやがって!」みたいな感情が原動力なのもあって、裸にする必要あった? となりがちではありますが、内容自体はそこそこ悪趣味なので性格の悪さも出ています。
これがヘテロ向けのエロゲという体裁を取り払った作品だったら恐らく一番妄想の被害にあっていたのは久保田だろうな……次に立山工業のおじさん……という気がするんですが、メタ的な意味にしろなんにしろ作品上はそうなっていないところに、主人公が「自分より物理的に弱い可能性が高い相手しか嬲っていない」という事実が出来上がってまた最悪さが増してよいです。


デフォルトネームは「日置」
とにかく本人が言う通り悪運にすら恵まれない男。なにもかも間が悪い。
ただ、哀れだなと思うと同時にお近付きにはなりたくないなとも思わせる人物。
キャラクターとしては嫌いじゃないです。

八重垣 千歳

主人公と同じ営業部に所属するOL。
いかにも気が強そうな女性で主人公には常に冷たい態度をとる。

おそらく、というかポジション的に確実にメインヒロイン。
主人公に気があるような素振りを見せつつ、普段の会話では鬼のような無愛想と辛辣な言葉を投げてくるひと。もっと言い方ってもんが……と思うんですが彼女自身もなにか問題を抱えているようで、常に余裕がなさそうなんですよね。だからといって人にキツくあたりすぎではあるんですが。
主人公とは別方向に感情の浮き沈みが激しくてうまく捉えられない人。
給湯室のシーンで主人公が「女の人ってわからないや・・・・。」と言っていますが女から見てもあの短時間での落差はなかなか謎なんだよなあ~?!


泉√だと比較的わかりやすく主人公に気があるんだろうなと思えるも、出てくる言葉のキツさと普段の態度のせいで主人公には一切通じていないところが悲しい。他の女性と一緒にいる場面に出くわすたび、小学生みたいな反応で機嫌が悪くなるので周りから見れば明らかに両想いっぽいのに。


主人公が片想いをしている相手で、どれだけその日に嫌なことがあっても、それがたとえ彼女の言葉に傷つけられたからだとしても、彼が決して妄想の中でさえ非道を行わない唯一の人間
たぶん本当に彼女のことは純粋に好きだったんだろうな……というのがうかがえて、千歳さんの退職の話がもう一週間早く出ていれば、給湯室でゆっくり話す機会がもっと早くにあれば、このふたりの関係は全然違う結果になっていたんじゃないかと思ってしまう。もちろんこのゲームにそんな甘いifの展開はないですが。あ、あんまりだ……。


しかしメインヒロインのわりにエッチシーンはかなり淡白であっさりめです。
全体的にあっさりではあるんですが、輪をかけて。やっぱエロが主眼のゲームじゃないのかな……。

神渡 真澄

バス停で出会う女子校生。
男性とのトラブルに主人公が割って入った事から交流が始まる。

2つある√のうち、片方でしか出会えない女学生。
姉に彼氏を寝取られた仕返しに、姉と寝たと思しき主人公を寝取ってやろうと奔走する。
実際のところ姉は遊びまくりの男なら誰でもタイプっぽく、主人公のこともたまたまその日ひっかけただけの男(というか男としても見てないかもしれない。棒として、道具としてしか見ていない感がある)なので完全に勘違いなんですが。その勘違いのせいで主人公は千歳さんとの仲をめちゃくちゃにされ、最終的には殺人犯に成り下がる道を爆走させられる。


ひたすらに言動が幼い。自分の身体を使って主人公を寝取ってやろうとするところも「子供だと思われたくない」「自分はもう大人だからこれくらいやれる」という考えが根底にあるんだと思われる。
最終的に手を下した主人公が悪いというのはもちろんなんだけど、それにしても真澄の最期にはさすがに自業自得という言葉を添えたくなります。いくらなんでも人をコケにしすぎた。さすがに姉妹喧嘩の当て馬として巻き添えを食らった主人公が純粋にかわいそう。


でも「あーこういう人間は実際にいるよね」と思わせるだけの存在でもあるのが彼女の怖いところだったりします。いる、いるよこういうメンタリティを持った女は……。

飛良 泉

主人公の中学時代の同級生。
駅前デパートのカジュアル売場で洋服の販売員をしている。

2つある√のうち、片方でしか出会えない女性。
彼女の√だととにかく千歳さんが主人公に対してアピールをしてくれる展開がてんこ盛りなだけに、間の悪さにキィ~~~~!!!となることが多かったです。泉さんが自分の寝床の確保のために千歳さんを諦めさせようとしてるんだろうな、っていうのが透け始めてからは特に。


ただ、彼女とのやり取りの中での主人公が一番自然体でいた気がします。引っ叩いて言いたいことが言えた唯一の相手でもある。泉さん自体も叩かれたからといって被害者面をするわけでなく喧嘩する姿勢で返してきたあたり、もしかしてこのふたりってそんな相性悪くはないのかな?という印象も。千歳さんに出会わなかった主人公が泉さんと再会していたら違う道もあったのかもと思わせる部分がなくはなかった。
でも、そんな一番まともな喧嘩ができそうだった矢先の彼女の態度で主人公の心が完全に砕けてしまったみたいなんですが。
主人公は泉さんへの苦手意識を克服できなさそうだし、泉さんはそもそも主人公のことなんか……っていう、まず前提すら成立しないふたりなのかもしれない。


真澄ほどの自業自得感はないかも。いや真澄がひどすぎただけかもしれない。
値下げして最後には追い出そうとしていたけど、はじめは家賃の七万は入れる交渉になってたみたい(踏み倒す気だったのかもしれないけど)だし、取り入ろうという動きもあったので。でもまあ、人をコケにしたツケを払わされたって感想は一緒です。


主人公、誰に対しても泉さんに対してくらいフランクに話ができていればと思わずにはいられない……。

神渡 七笑

商店街近くの歯医者に勤めている歯科助手
急ぐ主人公と商店街でぶつかり転倒して怪我をしてしまう。

なんかもしかしなくても大体この人のせいじゃないですか???


真澄の姉で、泉さんの元同居人。
この姉にしてあの妹ありだし、この後輩にしてあの先輩ありという感じ。
彼女とぶつかったことで主人公の破滅に向かうための歯車が回り始めたような……。主人公が別の歯医者を選んでいればこんなことには。


彼女に限った話じゃないですけど、出てくる女性みんな主人公に対する押しが強すぎるのと、なんでもないように失礼発言をかますので見ていてヒヤヒヤします。特にななえさんは主人公のこと棒としてしか見ていない感が顕著。


ビジュアルは断トツで好みなんですが。私服のパンツスタイルかっこよくて最高……。
というかこのゲーム、真澄以外の女性、みんなパンツスタイルの差分があるの本当に良いです。ありがとうございます。助かる。

越野 華

近くの保育園で働いている保育士。
公園で園児が投げたボールが主人公に当たった事から知り合う。

純粋な被害者。
人の善意を信じすぎて悲惨な目に遭ってしまった。
彼女に関しては本当に、主人公が家に呼ばれたとき狼藉を働きさえしなければ信頼を寄せてくれていたかもしれない人だなと。「性欲のない無害な男だと思ってるのか?」とか主人公はモノローグで言ってますけど、それって別に華先生が主人公を馬鹿にしたり軽んじているからではなく、純粋に信頼からきている反応だと思うんですが……。
雨の中呼び出されたときに関してはさすがに不逞の前科がある主人公に対して無防備すぎないか?!と心配になりました。手を出した方が120%悪いけど、それにしたって少しは疑って電話口で別れを告げて欲しかった……誠実すぎたのか、警戒心がないのか……。


とりあえず彼女には主人公と出会わない人生を送ってほしいです。
(たぶんそれが結果として主人公の頭痛の原因を取り去ることにもなると思う)

久保田

主人公の同期で入社した男。縁故入社らしく常にヘラヘラした態度を崩さない。なぜか主人公に子供のイジメめいた嫌がらせをしてくる。

いや、この、なんだろう、お前オレのこと好きだよなあ?!?!?って首元つかんで揺さぶってやりたくなるような男でした。


すっごくヤなやつで絶対関わり合いになりたくはないんですけど、嫌がらせの程度自体はしょーもな!ってレベルで。
「お前あの子のこと好きなの? じゃあオレが先に手を出して感想聞かせてやるぜw」って何? 主人公に構ってほしいのか……?? いざ主人公が本気の反応を見せると動揺したりするあたり怪しいんですが……(邪推)
たぶん主人公が「そんなに僕に構って欲しいのか」みたいなことを言えば気色悪がって次の日から絡んでこなくなるタイプだと思います。あいつ男が好きなんだぜとか噂はばんばん流されるとは思うけど。


主人公×久保田√があれば主人公が殺人犯になることもなかったろうに……(主人公がキレて暴れまわっても不意打ちじゃなければ抵抗できるだろうし、主人公が不逞を働いてやろうなどと思わない気がするので傷害沙汰の発生率が下がりそうという意味で)


先にも書きましたけど、これが男性向けのエロゲじゃなければどっかで絶対に一度は久保田に対する猟奇妄想が挟まれていたと思う。「減らず口を叩けないようにしてやるよ……!」などと言いつつ舌に釘を打つとかそんなん。

課長

一番の常識人で一番まとも、たぶん今回の件で一番迷惑をこうむる人。


最近ミス続きの部下が急に退職したかと思えば、その少しあとに別の部下が連続殺人犯として逮捕されるとか地獄すぎんか???
あんまりにもあんまりすぎる。残った部下は要領こそいいが縁故採用のヘラヘラしたやつっていうのもまた涙を誘います。素直にかわいそう。


主人公のあの態度を見ながらもちゃんと目をかけてくれている描写もあり、彼が初めて契約を取った日には本人よりも喜んでくれた、って普通に良い上司なんですよね……主人公の意欲のなさやら、会社そのものの業績なんかが重なって余裕がないだけで、恐らく本来であれば悪い人ではないし相談にも乗ってくれそうで……。
あの主人公をして「いい人なんだけど」と思われているあたり、本当にいい人なんだろうな。


日置くん、悪いことは言わないから情緒の不安定な女性陣や嫌味な同期は放って課長と一緒に真面目に働く道を選んでくれ。

ただ、
「謝るだけなら日置にだって出来るんだ!」
のとこは主人公が完全なるとばっちり食らっててめちゃくちゃ笑いました。

さいごに

web.archive.org
シナリオ担当された方の解説(?)ページも存在していたりします。
この感想を書く前に読んだら絶対影響受けるよなってことで書いたあとに読んだんですが、やっぱテーマ「現実」だったんだ! と手を叩いて喜んでしまった。
あとやっぱ主人公は捕まるし、最終日の出来事は全部本当に起きたことで妄想なんかじゃなかったと。しかも飾ってたんかい……(これは過剰な見出しの可能性もあるけど)(「4人もの独身女性を~」って、本編の流れとは齟齬のある表現もあるし)


96年発売のものを修正・訂正せずそのまま出してくれたことに本当に感謝しています。
起動時に表示される注意書きに「現在では不適切とされる表現があるがそのままにしている」みたいな部分があり、そうだよなあと。今の時代にこのゲームを出そうとしたら絶対どこかでストップがかかって企画が消えるか、それとも相当にマイルドにされて市場に出るかのどちらかだと思う。
猟奇表現で言えばもっと過激なものが近年新しく出たりしている(クロックアップさんの作品とか)けど、エリーゼの不適切部分はそういう目に見える部分よりも、全体に漂う雰囲気みたいなとこにあるんじゃないかと。90年代後半の世間全体が終わりのムードに包まれていたあの感じ。耽美さを感じさせるほどの湿度や装飾的な美しさのない、からからに乾いて無機質なコンクリートを思わせる、灰色の終末感というか。誰もが簡単に、ちょっと背中を押されただけで主人公と同じ行動をしちゃうんじゃないかと思わせる危うさ、みたいなものがこのゲームにはある気がしました。
さよ教の人見先生が感じていた劣等感なんかも身近なものだったけど、こっちの日置くんが置かれた現状や職場での扱いの方が身につまされる思いをする人が多そうというか、「現実的」な劣等感というか。


ともかく、制作に携わった方々は相当前の作品なのもあって見られたくない、期待しないでほしい、みたいなコメントを残されていますが、個人的には触れられてよかった作品の一つになりました。本当に。読後感は散々なんですけど(めちゃめちゃ褒めてる)


今この時代にこのゲームをプレイできたことを本当に嬉しく思います。
改めてありがとうございました。


以上