ニホンゴ、チョトデキル

ゲーム中心フリースタイル妄言

「因習村祠破壊RTA」感想

呪われた村の祠(ほこら)を壊し、村長に怒られるまでのタイムを競え!
バグや奇行を駆使し、記録1時間切りを目指そう!
村ホラー × RTA (リアルタイムアタック) 風の短編ノベルです。

※祠を壊す行為は犯罪です。絶対に真似しないでください。

今ではすっかりミーム化してしまい記号的になってしまった「因習の残る村でよそ者が禁忌を犯し、訳知りの老人に激怒される」一連のシナリオをまさかのRTAとして楽しめるゲーム。
大抵の場合RTAビデオゲームで行われる競技(?)ですがこちらの作品では「Any% バグあり 現実」とある通り、主人公が実際に村を訪問、いかに素早く祠を破壊できるかに挑戦します。


RTAを題材にしているだけあって、1ルート5分強・エンドコンプまで20分程度・すべてをさらうのに30分程度と非常にコンパクトにまとまっており、サクッと気軽に遊べるのがいいです。プレイ時間やギャグテイストな概要に反して因習村の持ち合わせるホラーな要素もしっかり組み込まれていて、勢いだけのおふざけともまた様子が違っているところに好感が持てました。


PC、スマホどちらのブラウザでも遊べます!
PCの場合はDL版もあり。
スマホはPWAというWebページのアプリ化に対応しているため、ページをホームに追加してから起動するとより快適に遊べます(配信ページ内で解説あり)。
novelgame.jp

感想

コンパクトにまとまりつつも練り込みのしっかりあるゲームだと思います!
フレーバー的な要素と思って流していた部分がきっちり回収されたりと、プレイの手軽さに反して満足度はかなり高かったです。細かい違和感というか、ん?となる部分に意味付けがされていて、なにより「RTAと因習村の融合」がしっかりされていたところには感動。
背景がただ素材画像をそのまま使っているわけではなく、ドット絵風に加工されているのもひと手間を感じます。


ゲーム中で説明もされる通り「より時間を短縮できそうな選択をし続ける」ことで新記録に挑むため、実際にプレイヤーがRTAをする必要はありません。作品としてはノベルゲームの形態です。ただ、選択肢の表示に時間制限があるおかげで臨場感があり、これがRTAに挑んでいる感を出すのに一役買っています。

「5秒以内」とはなっていますが、選択にかかる時間は結果に加味されないためきちんと読みながら進めても大丈夫な安心設計。


RTAを見たことある人間なら思わず笑ってしまうようなネタが盛りだくさんで最高でした。
壁抜け前転移動マップ切り替えでの時間経過加速ポリゴン裏移動名前は初期カーソル位置の「あ」等の技を駆使しながら村人との無駄な会話は極力避けつつ、しかし確実に村の祭りに参加するための好感度は高めつつチャートを進めます。壁に向かってガクガクぶつかったり屈伸運動を高速で繰り出したり、村人の当たり判定に引っかからないようリズミカルに前転で村内を移動し、民家では部屋と廊下の境で反復横跳びする主人公がしっかり村人に変人として見られ若干距離を取られているのが笑えました。それはそう。
祠を破壊することが目的のRTAなので、いかにもな因習村要素(村の古老、不穏なわらべ歌を口ずさむ双子、村長の娘、こちらを見てヒソヒソなにか囁き合う村民)はすべてガン無視で進みます。


あと、細かい小ネタが利いていました。スパチャの金額が「846円(=社)」だったりとか、人物のシルエットがかまいたち風だったり、ポケモンだいすきクラブの会長の長話があったりとか。

「…… ありゃ! もう こんな じかんか! ちょっと しゃべり すぎたわい!」


ED数としては2つになっていますが実際にはバッドエンドも存在しており、そちらから漂う不穏な雰囲気はきっちりと因習村要素を回収してくれています。
さらに特定EDを見たあと、ニューゲームで特定の行動を起こしたとき見られるボーナスルート的な部分があるのですが、そちらはもう完全にホラー要素を前面に推し出していて最高でした! 本編中である人物が話題に出す内容の回収にもなっていて、前述の満足度の高さにも繋がっています。どんな感じかと思ったらそんな感じか~…という。
村の因習の正体もきっちりと明かされ、投げっぱなしではなく一つの物語として完結しているのが素晴らしいです。


RTA」のインパクトで「因習村」「ホラー」の要素が記号的にしか感じられなくなっていたタイミングで、そうでないことを突き付けられる体験はなかなかインパクトがありました。


サクッと質のいい体験ができるので、ちょっと時間が空いて暇だな~といった場面におすすめのゲームかと思います!