ニホンゴ、チョトデキル

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「パラノマサイト FILE 23 本所七不思議 」感想のようなもの


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昭和後期の日本、墨田区を舞台にしたホラー・ミステリーアドベンチャーゲーム
呪いによって翻弄される個性的なキャラクター達、それぞれの思惑が絡み合い展開する物語は、あなた自身の手で結末へと導かれる。

本当に本当に、本~当に、すべてが最高でした!!!


とにかく未プレイの方は遊んでください。
特に428 封鎖された渋谷で探偵・癸生川凌介事件譚、あたりが好きな人、あとは流行り神のデータベースみたいな読み物コンテンツがあると嬉しい! って人は黙ってマストバイだと思います。街より428って感じ。あと、バディものとか、ダンガンロンパが好きな人も好きかもしれない。逆転裁判が好きな人も買うと幸せになれます。私は全部大好きなのでものすごくハッピーになりました。
ちなみに、癸生川シリーズの生王さんもとい石山さんがシナリオ、ディレクター等でガッツリ携わってらっしゃるので、そちらのファンには本当にたまらないはず。逆にこっちが面白かった人は癸生川シリーズも遊ぼう。
探偵・癸生川凌介事件譚シリーズ - G-MODEアーカイブス


これは本当に「ゲームというインタラクティブな媒体だからこその楽しみ」がたくさん詰まったADV好き垂涎の仕上がりだと思うので、自分でプレイしないと面白さがかなり減ります。ネタバレを踏む前に、画面キャプチャを見る前に、一刻も早くまっさらな状態でプレイしてほしい……。ただ登場人物の話を聞き、正しい選択肢を選ぶ……だけではクリアできません。この作品は、我々の操作が絶対不可欠な「ゲーム」なんです。
そもそもの土台にあたるゲーム部分が面白い状態の上最高に面白いシナリオ魅力的なキャラクター魅力的な掛け合い大量の差分とバリエーションが効果的に動きまくる立ち絵(しかも絵が上手すぎる)ストレスフリーなUI雰囲気バッチリのBGM等などがてんこ盛りになっている最高の一本でした。
対応ハードが多く、定価2000円以下というおバグり価格なのでとりあえずものは試しでDLだけでも是非に。


「ホラー・ミステリーアドベンチャーゲーム」の「ホラー」部分で躊躇している方がいましたら、そういうシーンはほとんど「これは絶対に来るだろうな~!」という身構えができるような流れになっていたので、過剰に怖がる必要はないとだけ。序盤に本当に数か所のジャンプスケアがあるくらいで、あとのホラー要素は雰囲気に寄っていきます(個人的にびっくり箱より怪談方向のホラーこそ好き派なのでこれは最高)


お好きなハードでお楽しみあれ。
・Switch版
パラノマサイト FILE23 本所七不思議 ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)


・Steam版
Save 20% on PARANORMASIGHT: The Seven Mysteries of Honjo on Steam


iOS
‎「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」をApp Storeで


android
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.square_enix.android_googleplay.paranoma&pli=1


春ゆきてレトロチカといい、最近のスクエニのADVがいい感じでとても嬉しいです。

さて今回、折り畳み以降は本当に致命的な部分は避けつつもネタバレしかない状態になりますので、真EDに到達した方以外は読んじゃダメです。


本当にクリア済の方ですね?
この先、本当にネタバレばかりになりますので、もし攻略を求めて迷い込んできた方、内容を知りたいだけの方なら回れ右です。攻略情報はないです。ただ、ヒントが欲しいだけの方がネタバレを踏むのは忍びないので、もしかしたらここは案内人の手助けも得られないし詰まりポイントかも?って部分の若干のヒントをば。恐らく最初の初見殺し部分は案内人が冒頭に説明をしてくれているのと、ヒントを出してくれているのでそちらを参考に。


・マダムと探偵パートの「変化」って?
→ここまで来たら、この二人ではない誰かの行動がない限り延々と本所をさまようことになります。他の「チャート途中の中断箇所から再開できる人」に我々しか知り得ない情報を与えて、彼らが接触するようにしましょう。手元を照らすには天井を見上げて、サインペンはどこかで暫時待機している人が復活法を知っています。


・マダムの最終手段
→ADVの基本「聞ける話はすべて聞く」の精神でいきましょう。先手必勝とは言いますが、この場合は相手が条件を踏んでいるかの確認も大事です。あとはもうどうにもなりません。彼女の決意は揺らがないので、もはや呪うしかないです。


・結末に納得いかない!
→すでに我々は条件を揃えています。意図しない行いをした人物がいませんでしたか? まだ何も知らなかった頃、怪しげな男と遭遇したときに不思議なものを目にしていませんでしたか? そこからやり直してみてください。



……と、いうことで以下は本当にネタバレ込みで「このギミック最高!」「シナリオのここがいい!」みたいな話しかありません。よろしくどうぞ。
長くなりすぎたので目次をつけます。

雑感

お値段以上すぎる満足感

まずはこれ。第一にこれ。完走後もっとお支払いいたしますが?! とものすごく動揺していました。
ボリュームで言えば確かに真ED到達まで自分は9時間ちょっとではあったんですが、なめどり(さすがに世代ではないのですが、なめねこのパロディでふふっとなりました)の完全収集には至っておらず、資料にも1個抜けがあるためまだまだ遊べます。
そして資料のテキスト量もそこそこあるため、本編以外にも読む楽しさがある!


そして今作が「パノラマサイト」と誤記される遠因となっている可能性もある、パノラマ背景
これがかなりいい感じです。ホラーな部分ともばっちり噛み合っていました。後ろになにか絶対にいる~! というのを理解しつつ振り返らないといけない状況なんかを、VRを使わず2Dでも味わうことができるのが良い。
さらに、平面のADVでは「背後から誰かが接近してくる」「背後の誰かを発見する」ようなアクションに対して「振り向く」みたいなコマンドをそのときだけ表示させる・イベントを挟む等の処理が行われがちだったところ、ぐるっと振り返ってみたら知らない人がいる! といった見つける楽しさの提示もできている。


登場人物も多く、そのほとんどにしっかりと立ち絵が用意されています。
しかもただの表情差分だけではなく、ポーズのバリエーションも複数用意されている……そしてそれらが状況に合わせぐりぐり動きまくる……。同人ゲーム制作のお手伝いでちょこっと立ち絵を描かせていただく機会がある身としては、これだけでもう気が遠くなる思いでした。すごすぎる……。そして当たり前すぎる話ではあるのですが、絵がもう途方もなく上手い……。
手の表情が特にたまらないです。最高です。服の細かいディティールの表現も息を切らせて見つめておりました。絵柄が好みすぎることもあり、ただでさえ魅力的なキャラクターたちのポテンシャルがさらに引き上げられているのを感じます。
あと、ほとんどのキャラに死体状態の立ち絵もある。デッドEDは比較的回避してクリアしているはずなので、ちゃんと確認したら主要キャラには全員分用意があるのかも……。かといって並垣くんに殺されるのはなんか癪だしな……。でも見られてない会話は全部回収したいよな……。という葛藤。


立ち絵がただ横に並んでいるだけじゃないのもすごくいい! 複数人が一堂に会する画面なんかの自然さがぴか一です。立ち絵自体のバリエーションも多いのに、シーンごとのレイアウトが毎回工夫されていてかなり画面に映像作品ぽさがあります。注目度を操作するためのぼかしなんかも効果的。
これたぶん、配置とかに手間がものすごくかかっていると思います。


BGMの数も豊富。先日配信開始されたサントラには19曲収録されており、そのどれもが雰囲気たっぷりで場面場面にしっかりマッチしています。
太陽にほえろ」とか「相棒」とかのテーマに使われているような楽器の音が聞こえてくる刑事コンビのテーマ(?)とか、昭和後期を感じさせるサウンドも◎
パラノマサイト FILE23 本所七不思議 オリジナル・サウンドトラック
このブログはアフィ登録一切していないのでじゃんじゃんアクセスして大丈夫です


逆にこういう機能があったらよかったな~と思ったのは以下。
あったら便利だなって部分しか浮かばないので、通常プレイは本当に快適で不満がないです。

  • テキストの高速スキップ、またはボタン押しっぱなしでの文字送り。
  • 既読率表示。潰せていない選択肢があるか気になる。
  • EDリスト。真ED到達後解禁とかでも見られたらよかった。


とにかく総合してクオリティがものすごく高いなと感じるため、この価格で採算取れるので?! と要らぬ心配をしてしまうほど。サントラ等も買っていっぱい応援します!

「本所七不思議」の扱い方

現実に語り継がれている「本所七不思議」の曖昧な部分を逆手にとって、「実は一つの出来事を色々な側面から切り取ったのが七不思議であり、そこには本来詳細なあらましが存在した」として今作オリジナルのストーリーを付加する手法がよかったなと。
実際にあるモチーフを扱うと「作中の設定」と「本来の話」を混同してしまう人なんかも出てくる可能性があるわけですが、作中独自の設定に関わってくる人物はフィクション色がそこそこ濃く、実在人物の名を使わない(晴明や道満ではなく、セイマンとかアシノとかいい感じに架空の人物っぽい人物が使われている)ため、うまく切り分けられていたなと感じます。資料内でもかなりしっかり本来の話と作中独自の真相が分けて書かれていますし。
裏に本当はこういう真相が隠れていたら恐ろしくない? と想像を掻き立てつつ、本所七不思議そのものを乗っ取ってしまわない、独自の展開を広げるため正しく「モチーフにしている」感じに好感が持てました。

「ゲーム」だからこそのおもしろさと、メタのようでメタじゃない構造

オプションで音量設定をしたり、手動セーブをしたり、ザッピングをしないと進めない部分があるのがとにかく最高の一言でした。しかもこのあたりがノーヒントではなく、冒頭も冒頭、一番最初に案内人と出会ったときに「こういう行動が必要になるかもしれませんね?」と示されているのがフェアでいい。しかもそれがこれ見よがしにあからさまなヒントではないんですよ。オプション設定やオートセーブ対応ですよというチュートリアル的な説明の中に、ごくごく自然な流れで攻略に必要な行動が示されている。オプションを開くよう促し、CVとかはついてないけどボイス設定がある? みたいな些細な違和感を覚えさせるのも上手い。


そして最初の初見殺しポイントに接触し、案内人の説明を聞き、そういうゲームならではのメタ的な操作大好き!!と、私なんかはなったわけなのですが。


実はこれがメタフィクションと見せかけた、非メタフィクションであることが最終盤にて明らかになるのがまた最高。
最初の内はかなりメタ的な構造になっているんですよ。導入から、音量を調整したり登場人物の意思に訴えかけたりして、案内人に示される「あなた様」は「画面の前でゲームをプレイしている私」とイコールで繋がっている。それが「作中にいる『私』は『セイマン』だ」と気付く、すなわちセイマンが記憶を取り戻すことによってイコールの関係が切り離される。「あなた様」は「セイマン」としての自我を取り戻し、画面の前のプレイヤーとは完全に異なった一人の登場人物として物語の盤上に現れる。
この構造が本当に身震いするほどたまらなかった。
ザッピングやキャラごとのチャートがあるような作品でのプレイヤーはこのセイマンと同じ立ち位置になるわけじゃないですか。「物語を俯瞰視点から眺め、複数の人物に憑依することで他の人物が知り得ない情報を手に入れ、行動を操作し、本来であれば打破できない状況を切り拓いて望んだ結末を迎えさせる」という。基本的に我々が取らせた行動は作中人物の意思として扱われるわけですが、今作は明らかに登場人物を操作する人物のセリフが選択肢として現れていて、その人物と対峙する案内人はプレイヤーの存在を感知していそうな振る舞いやゲームを操作しろと言わんばかりの説明をする。だからこそプレイヤーは自然と「このゲームは『画面前の自分』が関与しているんだな?」という印象を持って、自分の操作するのが、さらに登場人物に憑依している別の幽霊であることに気付きにくくなっている。


今作を完走したあと、一つ思い出した話があるんですよ。
その昔「5分で解けるトリックストーリー」という特番がありまして、その中に今でもずっと忘れられない「そして誰もがいなくなった」という話があるんですね。「アイドルのプライベートビデオロケで連続殺人事件が起こる。次々殺害されていく登場人物。たまたま同行していた探偵とアイドルの二人だけが生き残るが、そのアイドルも無残な姿で発見される。一人残された探偵が呟く。『犯人は……あなたですね?』探偵の指先は、こちらをまっすぐに示している」という流れで、視聴者はここで「最後ひとり残った探偵が犯人かと思ったら、こっち(テレビ画面の向こうの視聴者)を指差している?」と混乱するわけなのですが、この事件の犯人はこれまでの話をずっと撮影していたカメラマンという話です。カメラマンの撮影した映像というかたちで物語を観測している視聴者にとってカメラマンはその場にいない者として扱われ、容疑者に挙げられにくくなる、といったお話。
画面の前にいる私自身が各種操作をしているのではなく、私はこの話におけるカメラマンを操作していた、という構図。つまり画面前の私は実は物語に一切かかわりがなかった。プレイヤーにこれはメタフィクションであると誤認させて、自分の操作するキャラクターの存在をギリギリまで透明にしてみせていたということ。
逆に言うと自分を画面前のゲームプレイヤーだと思い込んでいた人物が、本当の自分を取り戻し、物語の中へ帰っていく話だなあと。


今、この感想を書くために公式や配信ページをようやくちゃんと読んできたのですが(完全にジャンル買い&事前情報を入れたくない派のため予約時にストアページを一瞬開いただけだった)、ゲームの紹介や特徴部分にこんな一文があり「その通りだけど!」となっています。

◆あなた自身の手で明かされる衝撃の真実

これ~!!!
最初も最初の何気ない部分に核心に迫る要素があり、でもそれは全てを知った後でなければ特別を意味を持たない……という演出が大好きなので、ここでもう大興奮。確かにそう! これは「私自身」の手によって明かされていく物語だった!

導入に仕込まれた伏線の数々

ゲーム起動後すぐは案内人とのやり取りから始まるわけですが、ここがもう結末まで見たあとだと伏線のオンパレードになっており、更に初見時はそれをほとんど匂わせないのがすごいです。そりゃあ本来ここにはすべての事情を知った者しかいないはずですからね……。案内人はカウンター発動の際に一緒に起動するよう設定された式神とかだったのかな?

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「泣不動縁起」の一部が出てきたときにはオ! 安倍晴明じゃん! ということは「蘇りの秘術」は泰山府君祭に関係があるのかな? などとはしゃいでいたのですが、これも後々に関係があるチョイスだったのだなあ……というのが判明し驚きました。安倍晴明蘆屋道満の直接対決ではなく、似た名前を名乗った亜流同士の対決というのも個人的に嬉しいポイント。
そして資料の更新による鮮やかなオプションへの誘導。しかし興家彰吾というメインキャラクターの死というインパクト絶大な引きにより、オプションを設定したことや、手動セーブについて、更にはここで会話した内容が一旦プレイヤーの頭から抜け落ちるだろうという注目度の操作。なにもかもすごい。手のひらで踊らされっぱなしだったと後になって気付く。



今にして思えば、ここで「本当に? 本当にそうでしたっけ?」と3回ほど聞き返されるのはそういうことだったのか……と膝を打ちまくる思いです。



なめどりと資料の回収のため再開する前に、ふと、名前入力にネタとか仕込まれてないかな? と思い立ち家族のアカウントで最初からプレイし、名前を「セイマン」にしてみてめちゃくちゃビビったの図。
結論として特にこの場ではなにもありませんでした。フルネームにしたり平仮名カタカナ変えてみたりしても変わらず。そのままクリアまで進行した場合どうなるかは未検証。


Switch版だとどんな名前を入れても最初は「(アカウント名)様」と呼ばれる仕様のようで、たまたま名前が「はは(母)」だったばかりにこう呼ばれた完全に偶然の産物なわけですが、心底驚きました。一瞬色々理解できなくて「父様じゃないの?!」が最初に出た感想だった。


シナリオ・ストーリーについて

全体感

内容自体は実のところかなり重たいテーマを扱っていますよね。
そもそもの「蘇りの秘術」ですが、それを求める人物が9人いるということは、物語開始時点で亡くなっている方が9人いるというわけで。始めの内は話しの引きの強さでアドレナリンが出まくっていたり、各々の事情もわからず、自分はなんもしてないのに勝手に呪いを行使する彼は何? みたいなこともあって魔術師本人がスタンド能力を使って戦う聖杯戦争みたいな感じかな? くらいのノリで楽しく呪殺バトルを見守るわけなのですが。興家くんパートをひと段落させるところで現れる春恵さんがいい意味で思考を立ち止まらせてくれます。
これまでのプレイで強烈に愛着の湧いたキャラを蘇生させるため、という動機に対して、幼くして亡くなった子供を蘇らせたいというより強烈な動機を示される。これによって一気に物語に緊迫感というか、それぞれの呪主が本気であることが伝わってくる。


誘拐殺人、未成年への淫行強要、拷問、家庭内暴力、通報義務違反、脅迫、監禁……などなど、現実で身近に起こり得る上に最悪な部類の事件がこれでもかと起きているのも印象的。今作のディレクター、シナリオ担当の石山さんが過去に制作された「探偵・癸生川凌介事件譚 Vol.10『永劫会事件』」もよく今の世にベタ移植できたな~と感じるくらい際どく最悪なマッチポンプ事件を扱っていたのですが、こちらはハードのパワーアップによりテキスト量が増え、より詳細に事件のことを知れる分あちらより受けるダメージが大きいかもしれない。
被害者のほとんどがまだ自分で自分を守る術を選ぶことすらできない存在であるのも余計にしんどい。


しかしこの一歩間違えると重すぎて胃もたれしそうな、そしてセンシティブでセンセーショナルだからこそ悲惨で忌むべき事件であるにも関わらず手垢のついたネタになりそうな話を、軽妙な語り口や掛け合いで受け止めやすくしてくれるキャラクターたちが絶妙でした。
いかにもぶっ飛んだ見た目の探偵、真面目な顔して漫才のようなやり取りをする刑事たち、霊感バリバリ少女とちゃきちゃきの江戸っ子女学生コンビ、などなどクセの強い面々が揃っていますが、彼らの言動自体はずっと一貫してまともなんですよね。全員、愉快で楽しい面をもっていて小ボケを挟んだりするけれど、一貫して事件のことを茶化したりは絶対にしない。これもあって、個人的にとんでもないヤツだと憤りや行動への不快感を覚えるキャラクターはいても、不愉快なキャラクターは一人もいなかったりします


物語の謎に関わる部分は呪いと、それによって起こる殺人、登場人物それぞれの思惑や誰がどの呪いを使えるか、本所七不思議と蘇りの秘術の関わりといった部分に集約されますが、その中核にあり話を突き動かすのは親子の情友情といったもので。
特に友人の自殺事件の真相を追う約子ちゃんを主軸にしたシナリオや、家庭を顧みず働いたことで家族との関係がギクシャクしている津詰刑事のシナリオあたりがかなり良かった。「またね」、すごく好きなシナリオですし普通にちょっと泣きました。
そして、親子の愛がただ美しいだけのものではない、間違いなく愛であるからこそそれが良くないものになってしまうこともある、という視点も示しているのもまた唸ってしまう。本当に子を愛し、なんでもできると滅私の気持ちを持っていたとして、それを自分のアイデンティティにしてはいけない、という言葉は相当にメッセージ性が強いと思います。これは親子だけの関係に限らない話かと。
そうした人間の思惑や信念、望みや願いが渦巻くさなかを泳ぎきった登場人物たちの最後に辿り着く先が、杖をついてでも自分の足で前に向かって進んでいくようなものになっていたのがとても良かった。
プレイヤーというかセイマンというか、他者に操作されながら進行した物語の「結末」は最後に現れた人物によってあのような形になったわけですが、物語が始まる前に決着をつけ、プレイヤーやセイマンの関与が一切ない状態で登場人物たちがそれぞれ自分の意思で動き出した末にもうひとつの結末が訪れるというのが良かった。ルールオブローズにて「プレイヤーがゲームを起動しなくなること、そもそもしないことが実は本当のベストEDなのでは?」と考えたこともあったのですが、割とそれに近い感覚があったりします。
ただ、今作も「プレイヤーが何かするまでもなく解決していた」事件ですが、今作に関してはプレイヤー(あるいはセイマン)の介入があってこその「プレイヤーが何かするまでもなく解決していたが、さらに儀式そのものの破棄も行う」流れができたというのは大きな違いで、プレイ後の感覚はまるで逆です。片やメタ的な表現は一切ないにも関わらずプレイヤーの物語に対する功罪のようなものを突き付けられた気分になるRoRと、片やプレイヤーが自身の存在を意識しながらも最終的には一切の関与なくしかしやり切った感覚を持って終われるパラノマサイト……。どっちも大好き。


実は初手の流れこそが最善手だった……という話の見せ方はかなり燃えました。
点と点が自分の頭の中で次々に繋がっていく快感はやっぱり気持ち良すぎます。


癸生川シリーズではどうしても容量の事情もあってか探偵である癸生川凌介デウス・エクス・マキナになりがちで、彼一人の口からあらゆる情報が発せられるために若干説教くささスレスレだった部分が、今作ではかなり脱臭・分散されているのも全体や個々のキャラの魅力に繋がっているのかなと。キャラクターの言葉や態度だけに頼らず、物語の流れで伝わるメッセージというのもあった。

秘術の成就後に蘇った人物について

これが個人的にちょっと気になっているところ。
作中で秘術を発動させられたのは根島、灯野、春恵の3人。
根島は黒幕と「アシノを蘇らせる」という約束を取り交わしているため、「追慕」で蘇っているのは確実にアシノ。
あやめちゃんは北斎を蘇らせたはずが、モノローグではどうにも復活したのは女性っぽい。でも画工としての腕前は空前絶後なので北斎の魂の参照自体は行われており、そこにアシノの要素も入り込んだ、もしくは複製先のベースはそもそもアシノだったってことなのかな? ……と、思ったんですが。後から「本懐」のあらすじを読むに、あやめちゃんの肉体に北斎の魂が憑依して絵を描いているっぽいですね?
春恵さんは無事に息子を蘇らせた。


しかしそうなると、春恵さんが蘇らせた息子の肉体はどこから来たんだ?
あやめちゃんは肉体を復活させる術を持たなかったための憑依合体みたいだし、根島は肉体の復活に他人の死体が必要なら躊躇いなく用意できるだろうし、この世界線だと黒幕が生きているからそっちに憑依しての復活の可能性もある。春恵さんは息子の肉体をどうやって用意したんだろうか……。

そもそも「パラノマサイト」って?

言葉としては「パラノーマル」+「sight」の造語、ってことですよね多分。
で、「パラノーマル=〔超感覚的知覚 ・心霊現象 などの〕科学的 に説明できない、超常的 な」「sight=視力・視覚・情景」、つまり「超常現象」ってことでしょうか。あとはシステムにも組み込まれてる「パノラマ」とか、ちょっと飛んで「パラサイト(parasite)」をちょっと発展させた形とかでもあるのかな。
超常現象ってだけだと「Paranormal Sight」になるんですよね。今作は「PARANORMASIGHT」で1文字抜けているし、全部大文字で区切りがない。ひとつの名詞になってる、ってことか。
つまり「パラノマサイト」って言葉自体は流行り神の「警視庁非公認事件記録」とほぼ同義と捉えてもよさそう。編纂室は警視庁地下五階にありますが霊対は警視庁のどこにあるんだろう。


「解除」後に追加される資料とそのタイトルを見るに今回の「本所七不思議事件」とでもいうべき事件が「パラノマサイト」の「FILE 23」にあたる、ってことですよね。つまり過去に津詰刑事やミヲちゃんが遭遇してきた事件が22までファイリングされているわけで……なんなら今回の本所七不思議事件も数ある超常現象事件の中のひとつでしかない。しかも本所七不思議事件は昭和後期の出来事なわけで、現在に至るまでの間にもっとナンバリングが増えている可能性がかなり高い。


ナカゴシさん、他のファイルのパラノマサイトについても何卒ご披露をよろしくお願いします……。


23/3/30 少し追記
ニンテンドードリーム23年5月号パラノマサイト特集ページにタイトルに込めた意味合い等が掲載されていました。特集ページ自体も2ページながら濃厚な内容となっていましたので、興味のある方はぜひ。パラノマサイトのBGMは収録されていませんが、Switchソフトのコンピレーションアルバムも付いていてオススメです。


キャラクターについて

全体感

とにかく全員、軽妙な語り口でテンポよく会話を進めながら、締めるところはしっかり締める緩急があり会話はもちろん単独行動のモノローグを読むのも楽しかったです。このあたりはさすが石山さんといった感じでものすごい安定感でした。


そして、キャラクターのビジュアルデザイン、口調、どちらにも奇抜な部分がまるでない(リヒタさんは派手な格好こそしているものの、十分現実的な服装であり実写にしてもまったく違和感はない範囲)にもかかわらず、全員がこれでもかとキャラ立ちしている。これが本当にすごい。キャラクターデザインのお手本みたいな事例だと思います。
唯一案内人のみが浮世離れした格好や髪色をしていますが、これはそのまま彼が浮世の者ではないからの意味付けを込めたデザインのはずです。というか彼(?)でさえ、翁面を外せば服装としてはまったく突飛なものではないんですよね……。すごい。


で、これだけキャラクターが立ちに立っているわけですが、キャラクターありきで作られた物語という印象はまったくない。物語という世界がそもそもあって、その中で自然に生きている人たちという感じなんですよね。みんなちゃんと生きている。
こんなに濃いキャラクターがたくさん登場するにも関わらず、キャラがいっぱい出てくるキャラゲー、みたいな印象は一切なくて、きちんと群像劇なんですよね。これが本当に嬉しい。

興家 彰吾


物語の主人公……というより、第一の視点。ファーストビューであり震源地に最も近い場所。
平凡に日々を過ごし、現状の時代や世間に不満を持たず生きている。ただ、いざとなったときの覚悟の決め方は著しく、呪殺にも躊躇がなくなったりする。
彼が事故的に手に入れ、またプレイヤーが最初に出会う呪いである「置いてけ掘」の行方、所持者が謎の根幹に響きまくる。


彼と、彼とバディを組むヨーコちゃんとのやり取りがもう出だしからたまらないです。癸生川シリーズの精神的後継作の意味をバチバチに感じた。霊感の強弱をアルコールへの強さで例えるくだりとか大好き。霊感ジンライム一気飲みいけちゃうくらい、改めマティーニ興家くん!


一番最初に辿ることになるのが彼の視点の物語であることにも意味があるの、最高。
どうして彼が最初なのか? 彼がこちらの操作に関係ない行動を行ったのはなぜか? 鬼火の呪影の持ち主は誰なのか? そしてそれは何故あのときあの場に現れたのか? そしてどうして彼はあの結末へ至ったのか? 全部に答えがきちんとある。こういう、物語のスタート地点が震源地で一番の謎の収束する場あり、すべての謎がそこで回収される構成が本当に大好きです。たまらない。



「やっぱアレ私じゃないよなあ?」と思わせるのが上手すぎる。これによって私は完全に「あ、これメタ作品なんだな?!」と思ってしまった。

福永 葉子


オカルト大好き、霊感はモスコミュールくらいならイケる系ヒロイン。ヒロインです。
彼女が錦糸堀公園で不思議探しをしてるところを発見した興家くんが声をかけたことから2人は知り合う。興家くんが彼女に対して感じていた運命のようなものが本物なの、良かったです。お互いがお互いのファタールだったというだけで間違いなく運命・宿命の相手であった。
個人的に癸生川シリーズの伊綱ちゃんがたまに王生くんに辛辣すぎない?! 親しき仲にも礼儀あり……! と思うことが当時から(伊綱ちゃん自体はめちゃくちゃ好きだしあの対応も魅力のひとつだと理解しつつ)チラホラあったので、パラノマサイトはどの組み合わせも相手に対するリスペクトというか、相手を過剰にイジったり意地悪したりしない関係性なのが安心感あってよかったです。これは別キャラですが笑顔で脅されるような場面なんかは大変GOODだと思います。


犬のネーミングが超独特なのもいいですね。オゴポゴ!
最初、案内人に「蘇らせたい人はいますか?」と問われたときに亡くなった犬のことを思い出したんですが、犬はダメかな〜と思い「他人に譲る」と答えたんですけど。それもアリなんか〜い! と。


で、いざ呪殺バトルの開幕だ! となったところで取り乱し始めるヨーコちゃんの指差す場所には何もないわけですが。あれって興家くんの背後=プレイヤーのいる場所を指してるってことですよね。目覚めたセイマンの意識がいよいよ自分の呪詛珠でカウンターを仕掛けようとしたのを察知して取り乱した。
その直後「押せ!」の指示で発動した呪いで彼女は死ぬ。
置いてけ掘ちゃんがバンと出るから事情がわかる前は「プレイヤーが発動させた呪いは『置いてけ掘』ってこと?」と思ってたんですが、興家くんが呪詛珠を手に入れるのはこの後なので。つまり一番最初にプレイヤーが発動させる呪いは「送り提灯」だったんだなあ……。


ぜひぜひ興家くんと本物のモスコミュールを飲みに行ってほしい。これは下心人情です。
あと、某シーンでの彼女の背後が気になって仕方ない。なんかいますよね?

志岐間 春恵


この、スッと目を細めた表情がたまらない。
全体的に翳のある美女という感じなのですが、本来はもっと朗らかで世間知らずの箱入りお嬢様っぽいのかな? と思わせる発言が節々にあり悲しくなります。良くも悪くも、親族の男性陣にお飾りのお人形のように扱われ翻弄され続けているひと。なにも不自由ない生活を与えられるかわりに自由もない。そんな中で唯一の拠り所だった息子の誘拐事件を経てだいぶ厭世的になっているように見える。


一緒に行動をするリヒタさんとの関係が、探偵と依頼主、そしてお母さんとでっかい子どもみたいになっていくのが微笑ましくてよかった。なめどりを見つけてはしゃぎまくったり、遊具に駆け寄るリヒタさんのテンションに若干引いている春恵さん、かわいいね……。


序盤にヨーコちゃんを呪う以外で呪いの発動が進行に必要なのはあと春恵さんだけだったかと思うんですが、息の根を止めるほかなかったヨーコちゃんと違って春恵さんの方の呪いは真EDへ向かうための道順だと不発に終わるのが安心でした。なんだかんだプレイヤーが呪い発動のボタンを押す必要性がある場面ってこの2箇所だけで、あとは登場人物が勝手に呪っちゃったりスルーの方が正解ルートだったりで、呪いを使わないことが正しい選択になっているのがよかった。


それはそれとして彼女の大願が成就する道もちゃんと用意されていたのも良かったです。果たしてその後に悩みがないのかと問われるとそんなことないだろとは思うのですが、それはそれとして願いが叶ったこと、それ自体はよかったなって。
伝説になったその後がものすごく気になります。

櫂 利飛太


春恵さんが息子の誘拐事件の再調査を依頼している探偵。
め、め、め、めちゃくちゃビジュアルが好みなんですよね……(下まつげを描かれるタイプの二次元男性の顔面に滅法弱い)(長髪キャラも大好き)(内面もとてもとても好き)


石山さんプレゼンツのゲームで「探偵」という役職のキャラクターが登場してしまうとどうしても癸生川先生を思い出してしまうわけですが、こちらのリヒタさんは「ウヒョー!」とか言い出しそうなビジュアルに反して常識人枠です。そして癸生川先生と並べるとどこまでも人間で愛おしくなります。別に癸生川先生のことを人外と思ってるわけでも非常識と思ってるわけでもないんですが、なんか、こう(ろくろを回す)

それはそれとして遊具行ってきたら? に対してのこの表情だったりFAXのような目新しいものには大はしゃぎする感じ、良良良。鳥を吸ってるのもイイネ。


子供に絡まれてまんざらでもなさそうだったり、探偵になった理由なんかを見るに恐らく彼は人間が好きなんだろうな。
春恵さんへの寄り添い方なんかから、警察を辞めて探偵になった理由の一端を垣間見れる気がします。警察という法を正義の基準とする立場では、他の人に行動を起こさせてそれを寸前で拝借する……という作戦に乗ることはできないだろうから。
人のため動く善のひとであるけれど、法のすべてを正義としては零れるものもあるだろうと多少のダーティさは飲み込む覚悟のあるひとってイメージです。


彼が序盤で個人情報の大切さを説き、終盤デスノートよりちょっと条件キツい呪いによってそれを実感させられる展開がわりとゾッとしました。今でこそデスノートより条件キツいからな~って印象の某呪いですが、当時の個人情報の扱いだと相当に緩い条件ってことですよね。
自分が小学校低学年くらいの頃までは連絡網とかありましたけど、あれよりもっと詳細な情報があっさり手に入る時代だったんだなあ……。

津詰 徹生


刑事コンビの強面な方。
こういう渋ダンディなおじさんが登場するというだけで今作にはめちゃくちゃ価値があると言っても過言ではない……。津詰刑事をはじめ、他にも気だるげおじさん、胡散臭い生真面目そうなおじさん等も登場しニッコリ。各種おばさまからおばさんまで完備してくれる作品もでないかな。


襟尾刑事とのコンビでの掛け合いが完全にコントのそれで大好きです。ほぼ初手で甘いもの好きをバラされているのも良い。
襟尾刑事に対しては彼の暴走機関車っぷりがすごくてツッコミに回りがちなものの、他の人物とのやり取りをみるに恐らくこの人自身も若干天然まじりの相当なボケ気質なんだろうな……と。因縁のある連続猟奇殺人犯を相手にボケ倒している様をみるに、実は似た者コンビ疑惑が自分の中に浮上しております。

ボケかツッコミかわからないけどたぶん素はボケ寄りなんだろうな。

情は確かに篤いはずなのに、どうしてか家族にそういった面を見せられていない人。呪いを受けながらの言葉をもっと早くに伝えられていれば、もしかしたら轢き逃げも通報があって轢き逃げになっていなかったかもしれない。
娘との再会時にまずは相手の心配からでしょとその方向から会話をはじめたところ褒められました。よかったねお父さん……。


刑事ってことはあくまで現実的な視点から事件に関わってくるのかな、と思いきやガッツリそっち側の人間でびっくりでした。上司のナカゴシさん、どこか別の場所でゲームライターとかしてませんでしたか?

襟尾 純


刑事コンビの爽やかな方。
と、見せかけて今作中随一のトンチキ方向へヤベーやつかもしれなくて大好きです。若さとか新人類とかそういうの全く関係なく、彼の鋼のメンタルとリスペクトはあるはずなのに絶妙なワードチョイスが組み合わさることで津詰刑事との掛け合いが声出して笑うほどおもしろくなっている。ちょっとズルいなと思うくらいに良いキャラをしている……。

何だこの人?!(オモロすぎる)

連続猟奇殺人を起こした人間にも「こいつやべぇぞ」と言わしめる突き抜けたぶっ飛びっぷりが最高。「立場的にボスが責任を取るんでオレは大丈夫です!」のとこむちゃくちゃ笑いました。こいつやべぇぞ!

しかしそんな彼も捜査では鋭い嗅覚を発揮してみせたり、優秀な刑事の一面もしっかり備えているので情緒がめちゃくちゃになります。女学生コンビを気遣って飲み物を買ってくれたりとか。そんなのみんな好きじゃん……。

逆崎 約子


約子ちゃんのシナリオが一番こたえたかもしれない。
全体を通してイヤ~な教師の解像度が高くないですか? 今も昔も、こういう話って明るみに出ていないだけで結構あったりするんだろうな……と暗澹とした気持ちになります。
個人的に「怨讐」EDはかなり好きだったりします。あれは逆恨みでもなんでもないし。死んだ本人による復讐なので、そんなことしても死んだ人は喜ばない!とかういう綺麗事が一切通用しない状態なのもいい。


約子ちゃん自体は駄菓子屋三代目でちゃきちゃきの江戸っ子! かわいい! 彼女本来の意識100%になってからの立ち絵がとってもいいです。不良やヤンキーとかとはまた違った方向の喧嘩上等感があって。


彼女自身の意思で呪殺を行ったことは一度もなくても、自分の身体を使って呪いを行使したならそれは自分が償う、という筋の通し方がカッコいい。もちろん、友達のやったことだから自分が受け止めると決心できたという面はあると思います。でも、そこに至るまで友人の置かれていた状況を鑑みて、呪殺された人たちはまあ自業自得だよね……と切り捨ててしまうこともできたわけで。それをしなかった約子ちゃんは本当にすごいと思う。
呪殺等の怪異へ対する刑事的な責任を取らせる用意があると提示されたのもまたいいですよね。やりたい事やったもん勝ちにはならないよ、悪いことしたらちゃんと捕まえますという制作からのメッセージを勝手に感じる……。


蘇りなんて都合のいいことありはしないと飲み込んで、現実の事件として友人の死の真相を究明し、日常を歩むことになった約子ちゃんに友達の霊は取り憑かなかったはず。それはつまり最後のやり取りも発生しなかったってことで。
でも、あのとき忘れないと誓ったことが、たとえ今の世界線だとか時間軸だとかに存在しない出来事だとしても、確かにセーブの中に残っているのがたまらない気持ちになります。もしかしてそこも含めてセーブが進行に関わる流れにしてあるのかな?


朝八時どこにいた? のパートについてはどこかにタイムテーブルがあるとよかったなと思いました。総当たりで問題なく進むんですが、確認手段がなかったため、相手を仕留めに行ったってこと? と思って8回ミスりました。記憶力ボロボロ。

黒鈴 ミヲ


セイマンの子孫がそれと知らずにどこかにいるかも……! となったとき真っ先に疑ったんですが、まったくそんなことはありませんでした。いやだってミヲちゃんのヘアピンがセーマンになってるから……。


約子ちゃんとのコンビが板につきまくってずっと一緒の友達っぽく感じるため忘れがちですが、彼女もまあまあ色んなものに振り回されていますよね。津詰刑事が友達ができたと聞いて感極まっていたのが泣けてくる。満場一致で黒魔術に明るそうと思われているのもちょっと不憫。せめてバイト代くらいは出してあげて~!
ただそのぶん大人たち相手に引かない立ち回りができたり、ちゃっかりしている部分があったりと、とにかく頼もしいの一言。


ミヲちゃんだけ各登場人物に取り憑いている某氏の存在を感知していたので、画面の向こうに声をかけてきたりするかな……とドキドキしていたんですが、そもそもメタ構造のようでメタ構造ではなかったためそういう展開は起こらず。完全に手のひらで踊らされていました。


うーん、ミヲちゃん、好きすぎる。


灯野 あやめ


主要バディ6名で留めておこうと思ったんですが、彼女にはやっぱ触れておきたいなと。


霊崎 朱(癸生川シリーズ)かと思って身構えていたら間桐 桜(Fate/sn)だった……。しかも最初からHF後半の桜って感じでアクセルベタ踏み。動機を探っていくととっても子供らしい反発心が根底にありそうなとことか。大切にされた実感がないから自分以外を大切にするつもりもないとことか。それはそれとして霊崎朱系のヤベー女も他にいるんだからすごい。
でもリヒタさんとのバチバチなやり取りを見るに霊崎 朱のエッセンスもかなりの量引き継いでる感じがしてドキドキします。こうなってくると黒幕とリヒタさんの対話とかも見てみたかったな。


「本懐」EDの口元に手を当てて笑いがこらえきれない! といった表情がだいぶ怖くてヤベー奴感満載なのがよかったです。これで黒幕なわけじゃないの、逆に恐ろしい気がしてきた。


最後の対峙、自分は呪いを使って情報を引き出そうとするのに、相手も同じような手札を切ってくると「それを私に使うとか正気?!」みたいな反応をするところ、個人的にめちゃくちゃ親子の会話だなと思っちゃったんですよね。色々言うけれど無意識の内に「この人は自分がどれだけ無茶やわがままを言っても私を攻撃することはないだろう」と思っていそうなところが、すごく娘って感じで……。


彼女が逃走の際に根島が踏んでいた条件が気になります。自分の生い立ちを知っていた彼女に「お前は津詰の子供だろ」と訊いたり「俺に子供はいない」とか言ったりしたんだろうか。
でもそれって、根島もあやめちゃんがどういう存在か知っていたってことになるんじゃ……?
「自分の知っている事実を相手が隠す」のが条件なら相手に隠す意思がない限り条件が成立しないはずだと考えています。「自分は知っているけど相手はそれを知らず、意図せず事実と異なることを伝える(結果として隠したのと同じ行動になる)」ことでは発動しないんじゃないかな~と。
そうなるとやっぱり恐ろしい話だ……。
そうしてまで手に入れたチャンスで掴みとりたいのが嘘偽りなく本心から「葛飾北斎の蘇り」なのもまた。本心は違うのかと疑っていたのですが、本懐なんですもんね……。

葦宮 誠


やっぱどうしても彼にも触れておきたかったので追記!葦宮のおっちゃん!


初登場時、あまりにも露骨に「片葉の芦」を持っていそうな名前すぎるし逆に安全だろと思ってまんまとしてやられました……。ごめんミヲちゃん……。


最後の最後にあった「そっちこそどうなんだ?」なやり取りの感じからして、黒魔術はパチモンで、残った赤ん坊はやっぱり篠との間にできた子供だったのかなと思います。篠の容体が悪化するきっかけになった「ある出来事」って要は出産てことなんじゃないかなあ。それをわかった上で彼女を狙ったり人質に取ったりしていたのだとするとやっぱイカれちゃった部分はあるんだなと。


そして、そもそもが目的のために自力で人間を生きたまま解体した実績のある者に、自分で手を下さずとも複数人を遠隔で殺せる呪いが憑いちゃったらどうなるか……。
でも、彼の「全校生徒の顔と名前をはじめとした個人情報の把握」って呪詛珠を手に入れる前からの特性なんですよね。一朝一夕で教師も含めた数百人の情報を覚えきるなんてどれだけ異常な記憶力を持っていても無理だと思う。仮に名前と住所を押さえられても顔写真は載っていないだろうから、そこは実際に本人と照らし合わせる時間が必要になるだろうし。
これは黒幕との接触がどのタイミングで、そして呪詛珠の能力を黒幕が事前に知ることができたのか、この2点の答えによって印象がガラッと変わってしまう。
もし黒幕との接触前、呪いも何も関係ない状態で全校生徒の顔と名前をしっかり覚えていたら「真っ当に働いた結果自然と覚えていった」「再び計画を立てるようなことがあったときのためのリサーチ」のどちらかになると思うんですよ。で、「そっちこそどうなんだ?」と切り出す前のやり取りからして、呪いをチラつかせられなかった場合は前者なんじゃないか、というかそうであってほしい、と個人的に思う。呪いというか、奇跡や超常現象に取り憑かれ振り回されてしまった人って感じ。「最悪の奇跡」ってやつだ……。
で、黒幕からの接触が校務員になる前や就任直後で、かつ「片葉の芦」の条件が事前にわかっていた場合。これはもう完全に生徒と仲良くするのは「『片葉の芦』で最大限効率的に滓魂を集めるための下準備」でしかないんですよね……。こっちの可能性も大いにある。そしていつか手に入る呪いのために準備を進め、今日が本番という日に学校で待機をしていた。そして「錦糸堀公園 part3'」以降の世界では見事それを手に入れる。
なればこそ「解除」の先の世界では、かつて縋った黒魔術にも効果はなく、黒幕からの情報も結果として嘘っぱちになって、「やっぱり蘇りとか呪いとかはないんだ」と憑き物が落ちてくれればいいんですが。


本当のところはどっちなんだろうか。





このほかにもまだ10名ほど登場人物がいるわけですが、ちょっと全員に触れていると本格的にどれだけ長くなるかわからないのでこれまで!
主要のメンバー以外にもたくさん感想があるって、あらためてとんでもないなと思います。これが長編RPGとかになれば全然わかる話なんですけど、ボリューム的には短編か中編か、くらいのお話のはずなのに。キャラクターひとりひとりがちゃんと生きているように感じられるのが魅力的なんでしょうか、やっぱり。
一言もセリフがなかったにも関わらずヒハクの会長が気になって仕方ない。女性であることや美への探求心、怪しげな動きから疑惑を向けたりしましたが、インチキって複数の本物から言われている以上彼女は完全にブラフだったんでしょうか。
蝶澤さんとか、パッケージにいるのに中々登場しない人物の視点が加わることによって物語が一気に加速する感じとかも好きなんですよね。


本当に本当に素晴らしいゲームでした!
制作に携わってくださった全ての方に感謝!


以上!

おまけ

クリア後の勢いで舞台のあたりを散歩してきました。ただ撮影した写真をそのまま使っているわけじゃないこともしっかりわかり、かなり有意義な体験になったかと!
本当に突発的にウロついたため下調べがなにもなく、駒形高校のモデル地、志岐間邸のモデル地、椎の木屋敷跡あたりが不明だったり抜けてたりしますが。また折を見てゆっくり散歩させていただきます。(志岐間邸のモデル地については個人の方のお宅である可能性が高そうかな~と思っているので、もし場所がわかってもちょっと前を通るだけで撮影とかはしないように気をつけます)


23/3/30 少し追記
ニンテンドードリーム23年5月号のパラノマサイト特集ページにて、駒形高校・志岐間邸のモデル地が明かされていました。個人宅等ではないため撮影も可能なようです。が、当然近隣の方のご迷惑にならないよう配慮しての訪問を心がけます。




……今度こそ本当に以上!