ニホンゴ、チョトデキル

ゲーム中心フリースタイル妄言

「原枝恚子さん怪死事件」感想のようなもの

”原枝恚子さん怪死事件”はシングルプレイの3Dファーストパーソン 短編ホラーゲームです。
怪死事件の遺族宛てに届いたビデオテープを通して、不可解な事件を追体験し、不気味さや得体のしれない恐怖を味わうことが出来ます。

雰囲気抜群モキュメンタリーホラー作品!
発売記念セールにて驚異の178円だったため即購入。価格からみて短編であろうことが予想されたので早速プレイしてみました。

阿澄思惟、梨、背筋(敬称略)の作品だったり、フェイクドキュメンタリーQ、諸々の謎しか残ってない未解決事件や「カアイソウ」に通じる雰囲気がありました。恐らくそういう作品や実際の事件に惹かれてしまう人間向けといった感じ。大好き。
こういう話って物語や作品としてお出しされた場合、長引けば長引くほど"慣れ"によって怖さが薄れてしまうと思うんですが、そこと短編であることがうまいことかみ合っていたと思います。VHS映像感を出すためフレームレートまで再現されていたり、一部実際のVHSテープの映像が使われていたりだとか、雰囲気作りにも余念がない。
個人的にかなりオススメ。
ぜひぜひ色んな人に遊んでみてほしいです!
store.steampowered.com



上述の作家さんや作品が好きな人間はこういう悪趣味不謹慎シーンに惹かれる何かがあるでしょう……(自己紹介)

良かった点
  • 雰囲気(事件概要や画面作り諸々)
  • 怖さが新鮮な内にクリアできるボリューム感
  • ジャンプスケアに頼りすぎないホラー(ないとは言っていない)
気になった点
  • (多分)セーブができない

導入を読み、プレイ開始したところで一時中断しようにもセーブの項目がないためオートセーブかとゲームを落としたら次回起動で最初からになってました。一気に駆け抜けられるボリュームなのでなんとかなりますが。VHS映像ならセーブできなくて当然だし、プレイ時間もだいたいVHS1本分くらいの長さなのが憎い。

  • 移動などの動作がもっさりしている

おそらく意図的な設定だし、あんまりシャキシャキ動けても平気そうじゃん!となるし、もっと素早く動いてくれ~!の気持ちは恐怖にもつながるし、全体プレイ時間もかなり短めなので許容範囲ではあります。

  • タイトル画面に映っているアイテムがVHSではなくカセットテープに見える

感想

1999年 9月12日、午後8時に原枝恚子(はらえだ けいこ)さんが自室内で倒れ、遺体となっている所が発見された事件。
警察は事件性はないと断定し捜査を打ち切ったが、不可解な点が多く残り、遺族は今でも情報提供を呼び掛けている。

冒頭から早速勘所を抑えまくった画面でアゲアゲです。阿澄思惟の「みさき」を髣髴とさせる淡々としたレポート調の進行、画面作り、最高。
恚子の恚は瞋恚の恚! ちなみに2023年現在人名には使えない字だそうです。常用漢字じゃないから以外にも意味もあんまりおめでたい感じじゃないですからね。
「恚」の読み方、画数について - 恚は名前に使えない漢字 - 名付けポン


ジャンプスケアはほとんどなく、終始いや~な雰囲気が漂ったまま進んでいくのは個人的にとても助かりました。驚かしもあるにはあるし、もう少し先かなと思っていたところへ急に叩きつけられて心臓止まるかと思うようなシーンもあったんですが、必要最低限ではある。初見だとどこに驚かしポイントがあるかわからないからずっと妙な緊張感があるんですよね。


自宅で、室内は明るくて、なのにまったく安全地帯という感じがせず居心地が悪い、って感触だけで言うと最近鑑賞した「Heck」というYouTube公開の短編映画に近かったです。

www.youtube.com


どちらも驚かしは最低限で、だからこそあるかどうかもわからないビックリポイントにずっと怯えてしまう。現実味のある恐怖感というか。辻の角の死角や壁の向こう側みたいな、物理的に見えない部分へ対する恐怖心ってものを動物として持ち合わせていて、そういうものが働いているのかもしれない。


下記、ちょっとネタバレチックな話。



恚子さん視点と外からの視点、どちらがVHS映像なのか?
これは個人的には送り付けられたVHSに収録されていたのは外からの視点のものだけで、恚子さん視点の部分がゲームとして付け足されたものなのかな?と思うのですが真相はいかに。
相手がストーカーとも怪現象ともどちらにも取れる描かれ方なのはモヤモヤが残って非常に良かったです。恚子さんの視点からするとまだ相手が幽霊の方がマシだなとは思いますが。ストーカー相手の身体的な恐怖の方が上回る気がする。



でも、このノート、最初からありましたっけ?
見逃していただけで最初から置いてあるものだったらいいんですが、途中から出てきたものだとしたら恚子さん視点も完全な創作ではないということになる……。触れないオブジェクトを後から追加する意味ってあんまりないと思うので……。
というわけで、セーブできなさそうと思ってからわりとサクサク進めてしまったので拾いきれていない要素がありそう。
ただ、考察系に寄りすぎるとホラーよりミステリーに触れている気分になることもあるため、投げっぱなしなのがわかる、逆に全部はっきり解説できる要素を残しておく、っていうのも良いことだと思います。
バイオハザードみたいな身体的恐怖がメインのホラーならサブジャンルがミステリーとかでも恐怖要素は薄まらないんですが、サイコホラー方向だとここの匙加減が作り手的に難しそうです。このあたりはジャンル的な境目もふんわりしてそうなエリアですし。


物語の性質上、レビューがみんな遊んでね♡系のコメントで埋まるのが見ていてなかなかおもしろいです。そこも含めて最悪だし、こういう最悪系の作品はそこまで含めて完成という印象もあるので大成功していると思います。
この方向性は梨氏の作品が契機か、最近多くみられるようになりましたよね。ネット公開された話の中だと「お憑かれさま」が源流にありそうな方向性。


どんどんこういったジャンプスケアに頼らない雰囲気の作品が増えてくれると嬉しいです。今作の雰囲気は本当に良かった。それだけに最終版の一か所だけはキエー!!となりましたが。
しかしそれがあっても個人的に大満足でした。やっぱりゲームとして自分で進めないといけない、って状況はホラーのドキドキを増してくれていいですね。


クリア後に見るストアページの「※このゲームにはフィクションが含まれています。」が味わい深いです。


以上!