ニホンゴ、チョトデキル

ゲーム中心フリースタイル妄言

「のろいあれといって」感想のようなもの


理由もわからず山に捨てられた少年が、自分を捨てた村に復讐をするため生贄を捧げるフリーゲーム「のろいあれといって」を、かんたん、むずかしいの両難易度クリアしました。
すごいゲームだった……。


EDについても触れる内容にります。未プレイの方には非推奨。
配布ページにて作者様が書かれている通り片道15分もあればクリアできるくらいのボリュームなので、ちょっと脅かし系のホラーが大丈夫な方はぜひ。
www.freem.ne.jp


以下プレイ後感です。


主人公、少年と呼ばれていて、タイトルやマップに表示されているドットの感じから見ても12~15歳くらいかな?と思っていたんですが、山頂やエンディングで流れるアニメを見てゾッとしました。もっともっと、本当に小さい子供だ……。
彼を追い出した村について「平穏に暮らしたい人々の村」となってましたが、それを乱すにしてもまだ幼すぎる印象なんですよね。プレイヤーの視点から見ると彼が迫害されそうな理由として見当たるものが、片足の広範囲がアザみたいなもので変色してるくらいしかなくて。しかもそんな子供を山に捨てるにしても下着すら与えず丸裸で打ち捨てる村人の非情さ。


ただ、山の歴史が語られたあとは少年が村から追い出される場面から物語が始まるので、実は少年がその年齢であっても許されないほど凶悪な性質を持っていた可能性もありますが。
「呪いのためにその身を捧げますか?」という問いに対して我々プレイヤーの操作を必要とせず「はい」と即答できたり、「その身」と言われているのに迷いなく他者を生贄として捧げられるあたり、少年自体も何も知らない純粋無垢な存在ではないんだろうな……という感じが滲んでいるのもまた味わい深いです。


いちおう主人公にも「ナグマニ」という名前があるので、どういう意味なんだろうな~なんて考えながらプレイしていたんですがまったくわかりませんでした(浅学)
響き自体はなんだかかわいい感じなんですけど……。


ゲームの内容自体はかなりシンプルで、山の中にいる生き物(?)を片っ端からザクザクやって祭壇に捧げるだけ。
戦闘とかもなく少年の攻撃が一度当たればあっさり生贄にできます。小さな男の子がそれだけのちからを持っているのもちょっと不気味なのではポイント。
山をうろつく生き物の中には明らかに人間の女のような存在もいるんですが、プレイヤーからの視点では他のクリーチャーっぽい生き物と似た見た目にしか見えないんですよ。多少は人間っぽいんですけど。山に長くいるうちに呪いの力で姿が変わる――長くいるほど怪物じみた容姿になってしまう、って最初は思ったんですけど、人骨が転がっているあたりあれは肉体のない存在か、それが化生へ変じた姿なのかな。


……と、思っていたら、生贄を十分な数捧げたあと残りを探してウロウロしている少年の前に、同じく裸に剥かれた少女の姿が……。「かんたん」だと逃げることも抵抗もしないでCを連打することで他の生贄と同じにすることができる彼女、「むずかしい」だと少年を一撃で仕留めてくる凄腕のハンターになっていて驚きました。向こうの方が強いのか、躊躇いがないのか……。
「むずかしい」の方では少女が一撃必殺なのと、こっちは連打じゃないと太刀打ちできないのが合わさってコロコロできない存在みたいになってます。が、呪いを起動すると何故か少女も倒れ、村に襲いかかっている。


ちなみに驚かし系にめっぽう弱いので、突然咳き込むような声をあげて突進してくる生き物が出てきたときには椅子から尻が3センチくらい浮きあがった……。


必要な数の生贄を集め、呪いの言葉を唱えることによって禍いが村へと襲いかかるシーンは、ほんの十数分この作品に触れただけの自分にとっても妙に感慨深かったです。特に呪いを完成させるために必要な言葉。ややこしく形式ばった呪文とかじゃないところが、この山に捨てられた存在の感情をシンプルに表していると思いました。でも、「あなたのことば」と言われて、入力を行ったのはプレイヤーなわけで……実際に呪いを起動をしたのはもしかして……
呪いが生まれてから襲撃に至るまでのBGMもとても秀逸。神とは何で、誰なのか。


村へのバリケードを破った瞬間、のろいくん(?)が見せた笑顔も印象的でした。
プレイヤーからすればほんの数十分、少年からしても長くて数年をかけた復讐劇ですが、最初に捨てられた誰かからすればもしかすると数十年、百何年にも及んだ大願の成就した瞬間なんだなと……。
しかしそれだけ積年の恨みがあるのだとしたら、村を壊滅させるだけでこの呪いは満足して消えるのか? 村が滅ぶさまは見ることができますが、そのあと解き放たれた呪いがどうなったかは見ることができないため近隣の村も同じように血と炎に沈めている可能性もゼロじゃないんですよね多分。


次々に血と炎に塗れて壊滅する村と、それを山から文字通り高みの見物をして、大はしゃぎで跳ねまわり喜ぶ主人公。
やっぱり多少は主人公にも邪悪の素養がある……純粋なだけかもしれないけれど……。
そしてENDの文字。一周は短いながらも相当に印象に残るゲームでした。



って綺麗に終わってればよかったんですけどね……。

はしゃぎまわる主人公をしばらく眺めているとかなりとんでもないボタン操作が可能になるんですが、見た瞬間の衝撃たるや。だってこれ、もしかするとこれまで山にいた生き物を直接的に殺していたのは実はプレイヤーだったって考えにも至れるわけで。最後のBGMからして捨てられた人々にとって呪いを起動させた存在は神であるかもしれないけれど、もしかしたら我々プレイヤーは悪魔だったのかもしれない。
で、悲しいかなゲームをやる人間の100人中99人はそのボタンを押してしまうと思うんです。ゲーム好きとは、そこに選択肢があれば埋めずにはいられない生き物なんじゃなかろうかなーと。
先を知りたい、テキスト埋めをしたい、そういう欲に駆られるまま私を好きと言ってくれた女の子のデータをゴミ箱に入れたり、見守ってきた少年を殺したりする。ハッピーエンドやベストエンド、トゥルーエンドなんて呼ばれる結末を見たあとに、バッド埋めをしてしまうのがプレイヤーという存在。


最初に主人公の退路を断った棘と、最後に突き刺さった棘……。


因果応報とか、人を呪わば穴二つみたいな意味のこもった部分もあるのかな、なんて思いつつ、山頂でこちらを見つけた彼の目や、棘に貫かれてこちらを呆然と見つめる彼の目が離れない。お前は共犯者じゃないのかと言われているようで。あのコマンドが出るまでは私もずっと共犯だと思ってたんだけどな……。


やっぱり我々(プレイヤー)は悪魔なのかもしれない。
そんなふうに思いながら、棘の折れるところまで見届けました。