ニホンゴ、チョトデキル

ゲーム中心フリースタイル妄言

「Lkyt.」ヤエル√感想とか

世界の終わりが来る。

主人公がかわいくてかっこよくて総攻!
ヒロインはみんな主人公より強いし社会的地位が上だしさらに年上!

安心安全・あのノーサンを出したparadeさんのゲーム!!
なんてもう、年下攻やら地位のある受ばかり啜って主人公は攻でしょと言いながら生きてきた人間ならマストバイ……みたいなゲームを、どういうわけか発売から1年も手を出さずスルーしており今になって猛烈に後悔して床を転げています。プレイした今となってはやって本当に良かったって気持ちと、なんでもっと早くやらなかったんですか?という気持ちがせめぎ合っている。
1ルートクリアしたところ胸をかきむしって大声出して暴れたくなってしまったのでだらだらっと感想など書いていこうかと。


共通部分とヤエル√踏破分のネタバレが存分に含まれているので、プレイ予定のある方には向かないです。
これは公式HPにある以外の前情報は一切なしに実際にプレイしてもらいたい作品……。


公式はこちら。体験版は共通部分が丸ごと遊べるみたいです。
pa-rade.jp
18歳未満の方はアクセスしないでね


というわけで以下、ネタバレありの感想。
他√がまだなのでヤエル√の話だけです。

共通部分

結構景気よく四肢や首が飛ぶ世界だな~と思いながらのスタート。
いきなり自分を慕ってくれてた相手の腕を落とし戦士としての人生を終わらせる選択を余儀なくされる主人公の与くん、いきなりすごいものを背負ってしまった感があるんですが、しんどいと思う心があってもこの国だとそういうことは日常のそばにあっておかしくない出来事のひとつなのだという感じで話はどんどん進んでいく。


話のテンポもよく、キャラもサクサク登場して、合間に世界観や用語の説明が自然と挟まっているのは本当に話がうまいなと思いました。どれもあんまり説明っぽくなく、進行上適宜スムーズに用語を覚えていける。

メインシナリオ・プロット協力に、成人向けPCゲームやライトノベルでリアルかつ骨太な戦闘描写に定評のある昏式龍也氏を起用。
――公式HP「特徴」より

こう前置かれているだけあって、戦闘シーンの描写が濃いめだったのも個人的にものすごく嬉しいポイント。キャラクター各々の「強い」という設定にちゃんと説得力がある。し、なにより自分がそういう戦闘描写が大好きなのでアツアツでヒリヒリするシーンが多いのは正直めちゃくちゃ興奮しました。ありがとうございます。命が助かる……。
最初の洞穴内での戦闘、ヤエルさんとの真剣を使った手合わせ、父の紛い物との戦いあたりがすごく好きです。
命を賭した戦いをするカップリング、めちゃくちゃヘキに響くんですよね……。


というかノーサンに引き続きルムナンも今作も原画さんが豪華すぎてびっくりしてしまう。なんかもう単純に絵がうまいしか言えなくなるレベルで絵がうまい……。年齢性別だけでなく同年代の同性キャラ間のかき分けもすごい。みんなちゃんと骨と肉が詰まっているんだなというのが感じられる、密度のようなものが見ていて伝わってくる絵、すごくすごく好きです。


画面は全体的に彩度を抑えて落ち着いた風合い。
城下ののどかな雰囲気、災厄に見舞われこの先がどうなるかわからないどんよりとした空気、同じ背景でどちらも感じられるのがすごい。


BGMもどれもシーンにマッチしつつ、過度な主張はしない、テキストを読むのにほどよい塩梅で全体的にまとまっていた印象。ただ、クライマックスなど盛り上がるシーンではここぞとばかりに主題歌のアレンジが入り込んできてこちらの気持ちも高めてくれる。音楽のチカラってすげー!
クリア後タイトル画面で聞く主題歌アレンジはクライマックス付近でかかるものとはまた別バージョンで、こちらは寂寞感というか、虚脱感というか、状況も相まって胸にぽっかり穴が開いたような心地になってしまった。


人類最後の砦であり、人類の脅威と真っ先に会敵する、文字通り水際にあるこの汀の国に生きる人たちは、とにかく精神性が強い。戦うことへの抵抗感の低さとか、全部やってそれで死ぬなら仕方ないと割り切るまでの早さとか。強いというか、麻痺や無知や無垢もあるのかもしれないけど。脅威にさらされて怯える一兵卒の描写は何か所かあるんですが、そんな人たちも発破をかけられたり鼓舞されると前へ進んでいくし、逃げ出したりはしないんですよね。
汀の人間は生まれたときからずっと「我々は世界のために戦って死ぬんだよ」と教えられて育ったひとたち。戦うために生まれて、戦うことが目的で、もし戦いが終わったらを考えている人はあまりいない。「次に繋ぐ」ことが目的になっていて「自分たちの手で戦いを終わらせる」ことはあんまり考えていないというか……そもそもその発想がないか、あっても相当希薄というか……備えと戦いが日常と化しているから、それから離れることを無意識に避けているのでは? と思わせるくらいには彼らの掲げる勝ちが「防衛戦での勝利」でしかないのがなんだか印象的でした。

キャラクター

年齢:20歳/ 身長:173cm
本作の主人公。
汀の国に生まれ、都に住む平民の兵士。朗らかで実直な性格の青年。
強者の多い汀の国の中でも戦闘の腕は最高級と評されているが、
身分と年齢から一兵卒として危険の少ない任務に携わることが多い。

純真純朴で真っすぐ。当たり前に家族を愛し、多くを助け、国を守りたいと考えている青年。とてもいい子。かわいい。武の才もあり、やるときはやる男。苦悩への答えとなるきっかけを両親からもらいつつ、最後には父の想いを受け取り、その死を弄するモノを討ち果たす展開は確実に新しい英雄を生み出す物語を辿っていた。
まだまだ伸びしろはあるものの、実力面では物語開始時点で一定のレベルに達しているため、圧倒的な力の差があるから相手に振り回されてるとかはない。けど、精神的な面ではずっと振り回されている。ウーン最高。
父亡きあとに家を守るのは自分だという覚悟を持って母と対峙する姿、年の離れた妹をかわいがる兄としての姿、後輩たちを庇いながら戦う先輩としての姿、いろんな面を垣間見ることができ、ひとりの人間としてキャラクターがしっかり立っているのが嬉しかったです。


それに、ただ純粋無垢で世間を知らない人間というわけでもないのがとても良かった。
たとえば強者との命のやり取りに楽しさを覚えてしまうところだったり、戦いを抜いたら自分にはなにもないと自覚的なところだったり、いざとなれば親しい相手を切り捨ててどこまでも合理的になれそうなところだったり。ネジは緩んでいるのかもしれなくとも善良だから、本人がそんな己の内面を見つめて悩むシーンが随所にある。
また、自分でこれはおかしいのでは?と気付いている歪さと、まったく本人が問題だと思わずスルーしている歪さの二種があるのも良かったです。
衛宮士郎や火野映司が抱えていたような「当たり前のように”みんな”の中に自分を入れない」考えを持っているタイプで、序盤からかなりハラハラさせられるシーンも多い。


与くんは自分の中にある「自分より強い相手と全力の戦いがしたい」「命のやり取りを楽しく感じる」という欲求や感性をちょっとおかしいのかもしれないと自覚しているのだけど、国のために当たり前に命を差し出すってことに関しては「無為に死にたいわけでもなし、そうすることで誰かを守れるのなら」と割り切ってしまっていて。同郷の人間は多かれ少なかれ同じような感性を持ち合わせているからそこを指摘しない。他国からやってきたヤエルさんと、超然的な視座をもった永羽様だけがそれを生き物としてちょっとズレてると認識している。


そんな与くんが√分岐後「自分が絶対にこの戦いを終わらせる」「戦いがなくなった世で自分がなにをしたいか考えたい」「あなたとしたいこと、あなたにしたいことがたくさんある」と未来を見据えて、未来を勝ち得るために死力を尽くし戦い抜くさまはしっかり主人公のそれでカッコよかったし、人間としての一歩をようやく踏み出せたように見えてよかったなあと。その行く末があんなふうに踏みにじられるしかないのは本当に見ていてキツい。


ノーサンのハルとは対照的にかなりの初心なため特殊なプレイの要求などもなくかなり真っ当(?)で、キャラクターとストーリーに即した展開が徹底されているのもナイスでした。
ブランド内では恋愛色もある方との前評にも違わず「自分はこの人のことが好きなんだ」という自覚をしっかり持った状態で話が進むのがなかなか新鮮でした。ノーサンも相手のこと好きだな!と思っての行為ではあるんですが、好きの内容物がちょっと違う感じで。まさに相手を「慕っている」といった風の与くんの態度がね……かわいいんだ……。
圧倒的年下童貞攻ムーブは健康にいい。最高。
100点満点中5億点。

相手に求められるなら別に自分が受け身側でもいいけど、でも本音を言うと自分が抱きたい……と思っている攻(絶対に受にならない)を啜り続けて生きているので寿命が延びました。

ヤエル

年齢:28歳/ 身長:180cm
砂漠の国から派遣されている剣士。
本国の王宮召し抱えの優秀な兵士だが、兵を率いるよりも単独行動を好む冷笑的な青年。
多言語に通じており、自国のみならず他国の人間への通訳を務めることもある。

他のヒロインたちと違って甘やかしてくれなさそう!ってことで最初にくっついていったところ彼のルートが一周目となりました。甘やかしてはくれないけれど優しくはしてくれる。そんなん好きになってしまいますが……。
最初のインパクトが大きいゲームだとは思うのですが、たぶん他のルートから始めていても与ヤエが推しになってただろな……と思わせるくらいには彼と与くんの関係が刺さってしまった。


当たり前のように非童貞で、自分が相手のことを抱く気でいるのがもう最高of最高でした。
自分が相手のこと抱く気満々でいる受(絶対に攻にならない)」が三度の飯より好きなのでハチャメチャに興奮した。ありがとうございます。助かりました。


別に与くんのことをそういう目では見ていないけど、向けられている好意は理解していて、正面から受け止めることはしなくとも決して無碍にはしない優しさというか情はある……みたいな態度のバランスがとてもよかった。与くんからヤエルさんに向けられる感情には恋慕が含まれているように見えるのだけど、最後まで進めてもヤエルさんから与くんに向けられる感情の中に恋慕はあった?なかったかな?ってくらいで。
それでも、ふたりの間にはたしかに通うものがあって。
バッド√に入ったとしても国へ帰ったり与くんの前から姿を消したりするわけでなく、隣でずっと戦ってくれはするくらいの情だか思い入れはある。
そういう態度が答えというか。


結魂を成せるだけの交流を経て、もうどうにもならない状況に追い込まれた中で「一緒に死んでやるからよ」なんて言葉が出たりもするし、それでも諦めない与くんと勝ち目の見えない戦いへ一緒に身を投じてくれたりもする。そこにあるのは恋とか恋愛とか呼ばれる種類のものではないのかもしれないけど、でも確かになにか愛と呼ばれる類のものではあったと思うんですよ。
やけっぱちになって全部終わらせに行くのではなくて、自分を慕ってくれたひとりのために、彼が守りたかったものを彼が自分で壊してしまわないように、これまでのことを思い返しながらその相手を殺しに向かう。
「一緒に死んでやるからよ」は本当のことだった。
そうじゃなきゃ二度も一緒に死んではくれないんじゃなかいなと思うし、そういう方向の気休めだとかは、与くんが本気で自分を好いているのがわかっている以上ヤエルさんは言わないような気がする。そもそもあの状態で気休めを言うような柄でもなさそう。


死から掬い上げられているあいだの回想からして、なんだかPretenderの歌詞みたいな言葉を向けられていた祖国の娘さんのことを、彼は彼なりに恋い慕って愛していたのではないかとも思うし、もしかしたら本当に運命の相手だったのは向こうの娘さんの方だった可能性だってある。
「運命の相手」は必ずしも恋愛的に幸福な成就をする相手なんかに限らなくて、ファム・ファタルやオム・ファタルだって運命の人なわけだから。それにもしかしたら世間的な意味での運命の人であったのを、早すぎる諦めによって失ってしまっていただけなのかもしれない。向こうの手を取っていたら今頃揃って拷問にかけられて死んでいたかもしれなくても、そこに至るまでの道には運命と共にあれる幸福があったのかもしれない。ヤエルさんはどちらの手を取ったにしても終着点が双方の死であるっぽいのがしんどいな……。


でも、誰が誰の運命であったところでこのルートではヤエルさんが命をくれてやったのは与くんだった、背負っているもの全部放り投げて一緒に死んでしまってもいいんじゃないかと手を伸べたのは与くんに対してだった、ただそれだけの話。
個人的にそういう、運命ではきっとないけど、それでもその手を取るみたいな話が好きなんですよね。
まあでも現実世界での恋愛やらなんやらって9割9分がそれなんですが。


与くんがヤエルさんをあらわすとき砂漠を思わせる表現をよく使っていたなって印象があるんですが、そのどれもが過酷な環境を思わせるよりも、曇りない様子だとか、カラっとしていてさっぱりしてるとか、行ったことのない場所に対する憧憬や夢見るような気持がこもっているふうに感じられたのが印象に残っている。

ルート雑感

他の攻略対象キャラに対してはどうしても役職的な上下関係があるためかしこまった態度で接する与くんが、ヤエルさんに対してだけはそういうのを抜きにした、単純な憧れの年上のお兄さんに対するような態度でいるのが個人的にグッときました。
あんまりからかわれれば腹も立てるし、見返してやるぞ!と一念発起することもある。
年上だし敬ってはいるものの、幾分か気安く話すことができている感じがして。


一個気になる部分として、与くんがヤエルさんにくっついて回るようになった経緯の詳細が知りたい……となったので、そのあたりの回想なんかがもっと詳しくあったらよかったなとは感じました。
与くんがヤエルさんのこと気に掛ける経緯はわかったし、シナリオ開始前から好きになる土壌はできていたんだなって納得はできたんですけど、そこで積み上げてきたものも少しは見たかったなというのが正直なところ。馴れ初めが大好物のオタクだからそう感じるってだけかもなんですが。
そのあたりは完全初対面からスタートして、紆余曲折を経て別離するところまで描いたノーサンの方が摂れる栄養素が多かったかもしれない。でも「好きです」からスタートしてそういう前提のあるイベントを詰め込んだLkyt.からしか摂取できない栄養素もあり……これは単純に味わいの違いってことですかね。どっちも好きです。


ヤエルさんが軽口を叩いたりツッコミを入れたりしてくれるキャラなので、ちょっと笑ってしまうような会話も多かった。
結構この気安さに救われていたところがあって、他√入ってもチラっと顔出してくれないかな~と思いつつ、他で出てくるとなると乾いた言葉しかくれないのかもしれないとも同時に思う。それはそれで√のヤエルさんが与くんを懐に入れているってことなんだなと実感してありがたみが増すのですが。
与くんも与くんで、奥手っぽく相手を気遣いながらおっかなびっくりコトを進めるわりに、自身や周りの自然治癒力が高すぎるゆえに尻が痛いと文句とも皮肉ともつかない悪態を吐くヤエルさんに対して「家に着く頃には治りますよ」とか言っちゃう天然ともノーデリカシーともとれる発言をかますしてくるの、めっちゃ笑いました。ここのシーン大好き。そこは気遣わないなかーい!って感じで。


あと、ヤエルさん、与くん、風花ちゃんの三人のやりとりがとってもかわいい。
ノーサン琉√の夢歩ちゃん・まゆげを交えた関係も好きだったので、推しカプ+子供や動物の構図が好きなのかもしれない。


名前や眼帯についてのアレコレが本人の口から与くんにあたえられるところなんかは、誰に聞かれても開示される情報なのかもしれないけど、そもそもそういった話をするほど誰かを近寄せもしなさそうだなというのもあってなかなか味わい深かった。
ヤエル√中に何度か出てくる「信頼しているってことと、すべてを明かすってことは違う。話せないことや秘密があったとしても誠実であることはできる」って意味合いの言葉が全部なんだと思う。
過去を丸ごと全部知らない状態でもいま目の前にいるあなたを好きになったのだし、語れないことがあってもそれを不誠実だとは思わない、みたいな……。
姫様に治そうかと言われたときには自分で背負っていくものだとしていた傷跡を、結魂のあと治ってしまうかもしれないと危惧されたときには「治ったら治ったでいいさ」と言ってしまったり。両親につけられた名前を憶えてはいないのだろうかという問いに一度ははぐらかすようにして答えなかったのを、最後の最後に込められた意味と一緒に明かしてみせたり。
やっぱそこには情があるし愛って呼ばれるものの片鱗であると思いたいんですよね。
国だとかなんだとか大きな意思によって無為に殺される人間を見ても心動かすことのなくなってしまった彼が与くんの始末を頼まれたことに関してやりきれなく思った理由を、本人が「――きっと、そういうことなんだろう。」と納得していたわけだし。


Hイベントは総じてヤエルさん優位だし、起き抜けに与くんをひっくり返すイベントに関しては「ちょうどよく反応してるし今なら抱けるか?」くらいの感じで自分が与くんのことを抱く気でいるっていうのが良すぎてニチャニチャの笑顔になってしまった。最後のイベントの「大人をからかうとこうなるんだよガキ」とかいう態度に反して子供っぽい発言も大変に良かったです。わりあい与くんに対してのヤエルさんは子供っぽいこと言いがちでは?という感がある。かわいいね……。
姫様に会ったあとの「ヤエルさんは俺と身体を繋げてもいいと……まだ思っていますか?」に対する「……」「いいぜ」の流れとか、テキストで読んでも十分すごいことになってるのにボイスで破壊力が上乗せになってるシーンが本当に多かった。あとこの流れの最後の「俺だって、そこまで子供じゃないんです。」がモノローグなのたまらないですね。その後繰り出されるのが超弩級の童貞ムーブなのも含めて最高。
そんなこんなで建前上は「ヤエルさんにも呪力を使えるようになってもらう」「結魂を成立させてヤエルさんの呪力を底上げする」ことを目的にしつつも与くん本人の思惑も含みながら途中エッチなイベントをはさみつつ文字を教えたり、使いを扱う練習をしたり、呪術の訓練をしたり距離を縮めていって。


真剣を使っての立ち合いシーンが本当に好きなんですよ。
立ち合う前の言いつけを守って血も内臓も流れるままにしていた与くんの、信じているから全部預けるって当然のように思っているとことか。一連の流れが結魂への契機になったことも含め。
剣士・戦士とされる人たちが相手の実力を認めた状態で手の内を明かして本気で手合わせするっていうことに、すごく意味があると思っている。自分の戦い方を見せるってことは、要はその時点では相手に敵対する意思がないってことなんじゃないかなと。手を抜けば死ぬような状況で、全部出すから全部見ろっていうのがグッときた。ほとんど反射で与くんがガードに呪力を使っていなければ腕が無事では済んでいなかっただろう決着も。


虚の母体との戦いの中、白昼夢を見せられている与くんの元へヤエルさんの声が届いて目が覚めるっていうのもベタだけど好きな展開でした。こういうのはロマン。


御盾の動向が序盤からずっと不穏で、母体を体内に封印してからもキナ臭さが消えないなあと思いながらも、このときはまだ「でもバッド√入ってなさそうだしなんかあってもなんとかなるでしょ」くらいに思っていたんですよね。宴会でなにか起きそうな雰囲気すごいけど、ここまできたらもう……って。
直前のイチャイチャイベントが最後のHイベントっぽいのはわかってたんですが、残りはハッピー後日談スチルが入る流れだろなあくらいの軽いノリで構えていてしまった。


で。
祝勝の宴会からの展開、本気で分岐間違えてバッドエンド√に入ったと思ったんですよ。
でも分岐自体がかなり少ないゲームで、前々回の分岐でバッド回収してしまったから、そうなると前回のエッチシーンの差分用としか思えなかったあの選択肢で分岐した……?!なんて混乱しながら進めていたら、そのまま突き進んでEDが始まりまして。
もう呆然としてしまった。
大樹から徐々にカメラが引いていくにつれて景色には緑が芽吹き始める。それはつまり虚が封印されたということで、それだけの時間が経ったということでもある。ハッピーエンドとしか言いようのない終わり方なんですよ。
個人的な感性として片割れがこの世に残ってしまうならメリバの味も感じてしまうんですが、取り込まれたのがふたり揃ってで、最後の瞬間のやり取りまで見たらもうハッピーエンドとしか言えない。言えないのに、苦しすぎてどうにかなりそうで。


呻きながらタイトルに戻るとイラストが変化していて。
「Lkyt.」の意味がそのとき初めてわかって。
わかった瞬間べちゃべちゃに泣いてしまった。

愛は世界を救うだろうか。
Lkyt.

公式HPのTOPビジュアルに入ってるこのワード、これ、もう、ほんと、意味がわかってから読むととんでもなさすぎて……。
愛は確かに世界を救いました。
それは本当にそう。


なるたる」の最終回を読んだ時も同じような感覚を味わったなと思いだしたりもしました。
Lkyt.ではふたりだけが世界から失われて、なるたるではふたり以外のすべてが失われた、と原因が同じ内乱でも起きた現象自体は真逆のことなんですけど。
EDとラストの見せ方が似てるからですかね。大きな時間の流れと、滅びなかった世界とを見せて、これはハッピーエンドなんだとゆっくり腹落ちさせる感じ。
人類という種にとっては紛れもないハッピーエンドなんですよ、どっちも。


で、このゲーム、なんとなくですけど意図的に選択肢の存在意義を薄くしているのかな?と。
なにがあっても按護様が手足を失わない選択はできないし、なにがあっても祝勝の宴は開かれて、なにがあっても与くんは叛乱の中で命を落とし、その骸は虚の餌になって、愛によってあなたは二度殺される。
ゲームであるなら避けられる選択を用意しそうな箇所にはまったく選択の余地がない。それこそが逃れられない運命だというのなら、プレイヤー側にできる選択っていうのはこれ、与くんの破滅に向かっての道に誰を同道させるかって部分しかないんですよね。唯一のバッド分岐を正しく超えて、虚との決戦に彼らを送り出したあとはなにもできない。見ているしかない。
残酷だ……。
でも、残酷だけど嫌いではない。
だから余計に苦しいんですけど。
もちろん大団円のふたりが生き残ってのEDが見たい気持ちもあるけど、それはそれとしてこういう結末を受け入れるだけの余地が自分の中にまだあったみたいで安心してます。こういうお話を作って、世に出してくださったことには本当に感謝の念がある。愛の存在は感じられましたし。ただむごいだけの話ではなかったし。
でも思ったよりショックが大きかったので他の√はもう一回ヤエル√やってからかな……の気持ちもあります。


残り3ルート、しんどさに負けず駆け抜けたいと思います。
固定カプ厨なので他√いけないってなる前に……切実……。